ウッドマイルズフォーラム2014
一般社団法人ウッドマイルズフォーラム設立記念シンポジウム
~100年後を見据えた地域の木質資源の利活用~
日時/平成26年7月29日(火)13時30分~17時00分
場所/木材会館7階ホール
主催/一般社団法人ウッドマイルズフォーラム
後援/林野庁
フォーラムプログラム
開会挨拶、趣旨説明
【100年後を見据えた地域の木質資源の利活用】(話題提供)
(ゲストパネラー)
1.太田猛彦氏/FSCジャパン議長・東京大学名誉教授
2.箕輪光博氏/公益社団法人大日本山林会会長・SGEC評議委員座長
3.熊崎実氏 /一般社団法人日本木質ペレット協会会長
4.安藤邦廣氏/里山建築研究所主宰・筑波大学名誉教授
【質疑応答・意見交換会】
【ゲストコメンテーター】
(ゲストパネラー)
箕輪光博氏/公益社団法人大日本山林会会長・SGEC評議委員座長
熊崎実氏 /一般社団法人日本木質ペレット協会会長
安藤邦廣氏/里山建築研究所主宰・筑波大学名誉教授
(ウッドマイルズフォーラム)
藤本昌也氏/公益社団法人日本建築士会連合会名誉会長
藤原敬氏/一般社団法人全国木材組合連合会相談役
(コーディネーター)
三澤文子氏 /京都造形芸術大学通信大学院教授
循環社会の主役としての木材、特に地域材の環境性能についての理解が広がることの重要性に鑑み、ウッドマイルズ(木材の産地から消費地までの距離)関連指標をはじめとする多面的な指標の開発、普及、及び利活用の実践、拡大を行い、トレーサビリティを確保した地域の木質資源の利活用の観点から持続可能な地域社会の構築に寄与することを目的として、前身であるウッドマイルズ研究会の活動を経て、本年4月に一般社団法人ウッドマイルズフォーラムが設立しました。
そこで、法人設立の周知を目的として、「100年後を見据えた地域の木質資源の利活用」をテーマに各界からの話題提供を行う設立記念講演を開催し、今後当法人が懸賞事業およびその他の事業を通じて推奨すべき地域の木質資源の利活用のあり方を探りました。
フォーラムには、自治体、森林、木材、建築関係者、その他、72名が集まりました。概要を以下に報告します。
フォーラム配布資料はこちら(PDF 3,827KB)
ファイル 58-2.pdf
開催記録(PDF版)はこちら(PDF 248KB)
ファイル 58-3.pdf
【開会挨拶】
藤本昌也氏/一般社団法人ウッドマイルズフォーラム会長
ウッドマイルズ研究会から一般社団法人ウッドマイルズフォーラムとなり、今後どのような理念や目的をもって活動をしていくべきか、本日の4人の先生方のお話を踏まえて検討していきたい。
午前中の総会においても、ウッドマイルズに限らず、より幅広く柔軟に活動をしていくことが本来の目的を達成することにつながるという思いから、本法人の理念と目的について、まず、グローバルな活動であることを示すため、「世界が共有する持続可能な循環型社会の実現」を理念とすること、及び「それらの諸活動を手掛かりに、わが国の山村と都市相互の信頼関係を基礎にした、幅広い地域連携関係の構築に寄与することを期待する」という点を付け加えた。
川下側である私自身、山村とのおおらかな連携により山村を豊かにしていきたいと思っている。
阿部勲氏/林野庁林政部木材利用課長
林野庁では各分野で様々な木材利用施策を行っており、具体的な成果はこれからだが、公共建築物木材利用促進法においては各市町村の木材利用方針が1,420件(全体の81%)に達し、様々な建築物に木材が使用されるようになってきていることや、木材利用ポイント事業においては一般の消費者の木づかいや森林に対する意識の向上、さらに再生可能エネルギーの固定買取制度では、木質バイオマス発電を中心に未利用間伐材の利用の道が大きく開かれてきている等、色々な分野で良い兆候が出てきている。木材自給率も平成25年度は28.6%になり上昇傾向が続いている。
国産材供給量も2千万m3を超えてきている。今後とも、より国内の木質資源が活用できるよう推進していきたい。ウッドマイルズフォーラムにおける研究や普及活動にも大いに期待したい。
藤原敬氏/一般社団法人ウッドマイルズフォーラム理事長(開催主旨説明)
建築物に使用される木材の輸送距離を短縮し、輸送エネルギーの削減や地域材需要の活性化を目指すため、木材の産地から消費地までの距離(ウッドマイルズ)に関する指標の開発と腐朽に関する事業を行い、わが国の地域資源の活用と循環型社会の構築へ寄与することを目的に活動してきたウッドマイルズ研究会が提起したこととして、第一にウッドマイレージ指標を用いて遠隔化している日本の木材貿易の特殊性を示したこと、第二に木材輸送に使用される膨大なエネルギーを示したこと、第三に木材のトレーサビリティの度合いを指標化したことがあげられる。地域材をグローバルにアピールする活動にも取り組んできた。
ウッドマイルズ研究会の10年の活動の中では、木材の様々な環境情報が整備されてきたことや、特に建築関係者からより幅広い指標を求める声が高まり、木材を総合的に評価する木材調達チェックブックを作成するに至った。この視点は今後のウッドマイルズフォーラムの活動においても軸となるものだと思っている。
ウッドマイルズフォーラムが目指すものは今後議論していきたいが、手始めとして、木材利用者を対象に地域の木質資源の優良な利活用者を懸賞するウッドマイルズアワード事業の開催や、木材供給者を対象に木材調達チェックブックの視点を活用して供給事業者を認定するウッドマイルズ認定事業を検討している。
【100年後を見据えた地域の木質資源の利活用】(話題提供)
太田猛彦氏/FSCジャパン議長・東京大学名誉教授
木質資源をもっと一般の人達に使ってほしい、そのためにはもっと広報が必要である。森林資源は過去半世紀の間に蓄積量が2倍半に、最も少ない時期に比べて4倍に増えている。昔は山の木を燃料として使い尽くしていたので木はほとんどなかった。木は日本の人口を支えてきた。しかし里地里山から人々の生活が離れ地下資源に頼るようになり、現状ではたくさん木が残った。しかし一方で地球温暖化が起こった。森林の活用は地球温暖化防止につながる。このようなことをもっと一般の人達に繰り返し伝えるべきである。
このような中で、森林林業基本法が改正され、環境的側面も踏まえ、持続可能な社会に貢献する森林管理を謳うものに変わった。これからは地下資源ではなく地上にある森林、木質資源を使って持続可能な社会に貢献していくことが我々の使命である。地下資源を使わないことは代替材との競争であり、その先に国産材や地域材があるが、業界関係者に留まらず一般の人達へ普及していくことが、ウッドマイルズフォーラムの役割だと思う。地産地消だけではなく、持続可能な社会に向けて、木質資源を利用していくことが使命であるということを、もっともっと一般の人達に広げていくことが重要である。
箕輪光博氏/公益社団法人大日本山林会会長
100年後を考えるにあたって逆に100年前はどうだったかを考えた。深川(木場)では材木商の素晴らしい世界や空間があったが、明治の混乱期には美しさを失っていったようだ。そのような中、明治14年には木材商の支援により山林の保護改良を目的とした山林学共曾が設立し、林材界のサロンとして機能していた。翌明治15年に大日本山林会に拡大し、初代幹事長は設立総会で100年の計として100年後の森の話をしている。その後132年の歴史があり、機関紙「山林」も1562号に及んでいる。
その後このような林材協働は、戦後の高度経済成長の時代に林業経済と木材経済、林学と林産学が分離し、外材輸入も相まって日本林業が衰退していく。今はまた林材協働の動きがある。例えばニュージーランドのラジアータパイン産業や島根県雲南市の連動的な木材利用。参考資料の『国際化時代と「地域農・林業」の再構築』には、これからの地域社会はどのような方向に向かうべきか、グローバルとリージョナルをどのように両立させるかが書かれている。
日本人は様々な分野において優れた用と美の哲学を持っていると思う。実業としてやっていることが同時に美しい世界を生み出している。かつての里山は美しく一体となったバランスの取れた世界だったが、高度経済の時代にそれが失われた。今、所有と経営を分離する団地法人経営も提案している。
資本主義の価値観を根本的に変えなければならない。巨大に自己増殖していく資本主義社会に対抗する色々な動きも出てきている。里山資本主義もその一例。ウッドマイルズの先にあるものは、どのような社会を構築していくか。参考資料の『木材と文明』には、木材が我々の文明を支えてきたことを色々な視点から記載している。
縮小社会といかに向き合うか。いかに日本経済を成長させるかという視点だけでは駄目。豊かさの価値観を変える。自然とどう付き合うか。これからは新農本主義に向かう。このような思想を象徴しているのがウッドマイルズではないかと思う。
熊崎実氏/一般社団法人日本木質ペレット協会会長
始めに日本を「緑の列島」と例えたタットマンの視点から。タットマンの書籍「日本人はどのように森をつくってきたのか」は、当時日本の学者は国内の視点しかなかったが、グローバルな視点から日本の森林をもう一度見直したもの。近世の略奪で荒廃の一歩手前来ていたが緑の列島が残り、17世紀終わり頃から伐採速度が低下し安定した森林利用が出現した背景には、藩の上からの規制、コミュニティレベルでの自主規制、人工造林技術の確立と普及があった。日本は世界に先駆けて持続可能な林業への転換を果たした。
300年前には、イギリス、日本、ドイツにおいて3つの先駆的な著作が出ている。その後この3つの国は得意な歴史を歩んできた。当時、イギリスは7つの海を支配し海外から安い材木が沢山入ってきたため自国での山づくりは起こらず、第二次世界大戦以降山づくりが始まっている。日本は明治の頃までは林業は100年の計として続いていたが、戦後それがおかしくなった。ドイツは初めから辛抱強く長伐期の山づくりを続け、伝統的なやり方を守り、森林資源が充実し、路網を完備し、今のドイツの林業がある。そしてこのことをドイツの人達は誇りに思っている。昨年はドイツ林業の300年記念式典が大々的に開催され、森林はドイツの文化遺産であることが共通認識になっている。日本も同時期に持続可能な林業を始めたが腰が折れてしまっている。
ドイツの木質資源利用は生産量も伸びている。森林1haあたりの木材生産量も極めて多い。各国の総エネルギーに占める木質燃料の比率もドイツは約4%(日本は1%)。日本は森林資源が有効に活用されていない、ここに非常に大きな問題がある。原因は色々だが一つは路網密度。ウッドマイルズを切り口に国産材や地域材を推進するのは良いが、国内の林業者の責任は大きい。これからの100年を見据えてしっかりとした山づくりに取り組んでほしい。
安藤邦廣氏/里山建築研究所主宰・筑波大学名誉教授
木材利用側として、先を見据えた木材利用、特に地域の実践事例について幾つかお話ししたい。木材利用や伝統的な建築の活用等の社会活動に取組んでいるが、一貫して里山を利用した暮らしの再生に取組んでいる。
3年前の震災が転機になった。なかなか動かない日本の今後について、動き出すのは災害の後であることは歴史が示している。木造建築においても今新しいものが生まれようとしている時期である。その始まりが仮設住宅で、福島において4割以上木造で建設できたのは、原発事故から立ち上がろうという気持ちが皆にみなぎっていたからで、これを持続し広げていけるかが本日のフォーラムのテーマに通じることだと思う。
具体的には10年ほど前から取組んでいる板倉構法で仮設住宅を建設。地域の資源と地域の力が作りだした必然的な姿だった。森林資源である木を使った再生の取り組みは世界にも発信することができた。アルミサッシ以外は杉や木質資源。逆に石油製品は使えなかった。短期で大量に供給するため合理化にも取り組んだ。
南三陸町では復興モデルハウスを作った。かつては津波の後に山の杉を使って再生していたが、その後石油製品の時代となり、山は荒れ果て、現在の山は直ぐに利用できる状態ではなかった。民間の山に手を入れる余裕が現地の森林組合にはないのも現状であった。製材が零細、職人が不足という現状では、裏山の木を使って家をつくることはとても難しいが、それでも何とかしようと、自伐林業と賃挽製材による木の家づくり互助会をつくった。地域の方や復興ボランティアも加わって取組を始めている。家づくりは共同作業だけではなく地域社会の共同も取り戻す大きな契機となると感じている。このようなことが普遍的なモデルとなることが、今日のフォーラムのテーマでもあると思う。
【意見交換会】
箕輪光博氏/公益社団法人大日本山林会会長
熊崎実氏/一般社団法人日本木質ペレット協会会長
安藤邦廣氏/里山建築研究所主宰・筑波大学名誉教授
藤本昌也氏/公益社団法人日本建築士会連合会名誉会長
藤原敬氏/一般社団法人全国木材組合連合会相談役
三澤文子氏/京都造形芸術大学通信大学院教授(コーディネーター)
(藤本氏)
私は町からの取組を行っているが、今、時代の節目の時期に来ていると感じている。2000年から宇部の中心市街地の活性化に取組んでいるが、最初はうまくいっていたが今は非常に苦しんでいる。特に2000年以降の10年間は過渡期だったと思うが、2020年を町づくり元年としようと考えている。元岩手県知事の増田氏により日本の地域の半分が消滅集落となり東京に一極集中するという人口問題が提起され、地方自治法の改正や国交省の新しい施策も登場している。これらは今後の地方の都市政策を根本的に変え得るものであるが、そのような現実を踏まえた時、木材利用とはどのような位置付けになるのかが大きな課題となる。人口が減少する新時代において、木材をたくさん使うと言っても、ものづくりの立場としてどのように捉えるのか、自治体はどのようなかじ取りをすべきか、しっかりと考えなければならない。一方で、人口が減少し定常化することで成熟社会がむかえられると考えれば、幸せの価値観の変更など明るい未来も想像できる。ただ、これを実現するには具体的に何をすればよいのかが難しい。公的、民間、という区切りではなく、皆で支え合う共助型社会という思想でやっていく必要があると感じている。
(箕輪氏)
考え方や価値観を変えるのは簡単だが、実際に行動していくことはとてもたいへんである。大日本山林会は中間支援団体として森林所有者と木材産業を結び付けるための情報発信をやってきたが、安藤さんのような具体的な現場で人々を結びつけるという活動はやってこなかった。これからはこのような具体的な実行をどんどん普及させていくしかない。家づくりだけではなく農業の現場でも。例えばかつては自分の地域に、自然、資源、人、職人、全ての物があり、それで十分だった。その時代には戻れないが、このようなことをリードしていく人材を育成する、教育していくことも大切だと思う。
(安藤氏)
今やっている活動を持続させることが最終目標だが、今はまだ被災地でそれが突破できるかどうかというところ。突破出来ればそれが普遍的なモデルに成り得ると思うが、突破できるかは今のところ五分五分かと思っている。課題は地元住民の価値観。このような家づくりは、すぐには理解されない。理解されても1割以下の人達くらい。もう一つは生業の再生で、木の仕事場をつくる方が理解され易く早く実現できるかもしれない。また、活動に集まってくれるのは若い女性が多く、都市居住で、通いで地域の仕事を行う、という地域の新しい流動的な定住のやり方も生まれてくる可能性がある。
(熊崎氏)
長い歴史のある森林を、我々がどのように継承していくかが課題である。ドイツでは、かつての森林の荒廃から300年かけてそれを蘇らせてきた先人への強い感謝の思いや信念があるが、日本にこのような土壌があるかどうか、これが一番の問題である。日本の森林の歴史を今一度しっかりと学び直す必要があるが、確かに一部の森林は荒廃の危機に直面し、それを皆で何とかしようと復活させてきた過去の努力がある。森林施業のやり方も色々と変えながらやってきた。戦後の杉、桧の植林も一生懸命やってきた。これらは我々の資産でありそれを引き継いでいるのだから、もっと上手に活用するためにはどうしていくべきか、どうやって議論の場をつくっていくか、国民的なコンセンサスを得ることが大事。
(藤本氏)
宇部の町の再生の取組において問題なのは、地権者が無関心であること。空き家が数十件放置されている。宇部の市民にとって中心市街地は商売だけでなく精神的にも大事な場所であるはずで、宇部市民全体の問題である。地権者も使えないなら利用する人に譲るという社会的責務があるのではないか。森林も同様で所有者に全責任を押し付けるのではなく、共有財産という概念で捉えるべきなのでは。
(熊崎氏)
日本は森林の財産権が強すぎる。ヨーロッパでは森林に対する責務や規制がたくさんある。日本では所有者が何をやっても良いという状況になってしまっている。それは森林を皆で守っていくという意識が全くないからだと思う。
(会場)
太田先生のお話しからは、木をもっと使う、地球温暖化に貢献する、という我々の責務が良く分かった。箕輪先生のお話しからは、地域経済、地域でいかにお金をまわすか、これを木材を中心にどうしていくべきか、という問いかけを感じた。熊崎先生のお話からは、ドイツでは森林が文化遺産に位置づけられ、日本の地域の森林でも文化を残すという捉え方が必要だと感じた。安藤先生のお話からは、互助会をつくって自伐林業と賃挽製材で取組んでいる、これこそ我々が取り組むべきものだと感じた。そして、地域の暮らしの中で社会を作っていく必要があると感じた。地域の中で地域の資源で地域の人でつくっていくのがこれからの社会である、ということを我々もきちんと捉えて見つめ直す必要がある。ウッドマイルズのこれまでの活動では、暮らし、人、文明という話は出てこなかったが、今回のフォーラムの中で新しい視点を感じられてとても良かった。
(会場)
木を伐ることが悪であるという論調もある中で、太田先生の、まず木を伐るところから始まる森林整備、というフレーズが強く印象に残った。また、ドイツでは森林資源を誇りと感じる国民性があるというお話だったが、日本では、いつ、この誇りが失われたのだろうか。
(熊崎氏)
戦前の御用林や国有林はちゃんとやられていた。その後、色々とあるかとは思うが、戦後の経済成長の工業製品輸出の中で、原材料は海外から輸入すれば良いという思想が強くなったのだと思う。結果、農業や林業は安い原材料が良いという風潮が蔓延したのだと思う。今の時代になって、世界中の燃料が高騰していく中で、工業製品を輸出して燃料を輸入することは成り立たなくなってきていると思う。その時、もう一度日本の森林資源を見直す必要が出てくる。これからその転換が始まると感じている。日本に森林は必要ないのではという視点から、日本には森林資源しかないという視点で、今こそ皆で考える時である。
(箕輪氏)
高度経済成長期に、林業経済と木材経済の分離、林学と林産学の分離が起こったが、木材価格等の市場経済の方が拡大し特に行政はどんどんひっぱられた。今度はエネルギー代替としてそこへ向かっていく。いったいどういう見地から考えるのか。資本主義社会は市場経済の力が強くそれに対応しなければならないが、国民の立場はどのような関係になるのか。例えば戦前の国有林は富国強兵の時代であり国家の森づくりであった。一方、一生懸命植林をして自分の山づくりに勤しんできた篤林家もたくさんいる。戦前は資源政策、戦後は産業政策、今は国民を対象とした地域政策の時代である。施策では国民を対象とするが、森林に関心のない国民が多い。このような状況をどのような視点で捉えたらよいのか。そして実行はどうするのか。一方で、地域には色々とやっていく力がある。
(会場)
立ち枯れについて研究しているが、日本中に広がる立ち枯れをどう考えているか。世界中でも立ち枯れが広がっているが大気汚染による土壌の酸性化が問題である。林学会では原因は虫であるとしているが、100年後を考えるのであれば、土壌の酸性化によりナラやマツが全て枯れてしまう。
(箕輪氏)
日本ではマツ枯れもナラ枯れも進行しているが、原因が虫なのか、手入れ不足に起因するものなのか、土壌汚染なのか、私には正直分からない。ただ、将来日本の森が全て無くなるということは絶対にない。
(会場)
建築用材とバイオマス利用は主軸だとは思うが、外材が多く使われている梱包や土木などの産業資材への国産材の活用をもっと積極的に行い、それで余ったものをバイオマスに利用するべきだと思う。
(熊崎氏)
木材利用において、マテリアル利用を前提として、それで使えない部分をエネルギー利用とするのは当たり前のことである。ヨーロッパでは全てそうである。カスケード利用を前提として最後にエネルギー利用とすることで最も安いエネルギーが手に入る。
(安藤氏)
三陸では水産業のいかだや杭など、産業資材として杉を積極的に利用している。杉のコストが住宅資材のコストに全てかかってくると結局住宅も高くなるという悪循環になるので、産業資材として積極的に利用することはとても大事なことだと思う。
(藤原氏)
木質資源が増えている一方で山村の人口が減少していくという中で、木質資源をどのように使って社会をつくっていくのか、そこに都市の人達がどのように関わっていくのか、ということが大きなテーマだと思うが、マーケット原理だけでは難しく、人づくりや様々な取組が必要だと思うが、このような大きなテーマの中で、ウッドマイルズフォーラムは木材を通じて山村と都市の人達を結びつける等、具体的な取組を皆で考えて行こう、ということを提起している。ウッドマイルズフォーラムを是非応援して頂きたい。
以上
- 作品名
- フォーラム2014
- 登録日時
- 2014/08/05(火) 20:56
- 分類
- 2014年度