ウッドマイルズフォーラム2011
~木造仮設建築物の支援活動から、地域の森林・木材・建築を考える
日時/2011年7月16日(土)13:15~17:30
場所/安田コミュニティープラザ A+B会議室
主催/ウッドマイルズ研究会
フォーラムプログラム
【第1部】取組事例報告~地域の力を生かした、木造仮設建築物建設支援の現場から
1.LIFE311被災地支援プロジェクト~岩手県住田町の地域材仮設住宅支援
水谷伸吉氏 一般社団法人モア・トゥリーズ事務局長
2.手のひらに太陽の家プロジェクト~日本の森バイオマスネットワーク復興支援活動
大場隆博氏 日本の森バイオマスネットワーク副理事長/栗駒木材株式会社
3.震災によって発生した廃木材の再資源化と木造仮設建築物への「復興ボード」供給の試み
内田信平氏 岩手県立大学盛岡短期大学部生活科学科准教授
4.3.11生活復興支援プロジェクト~学生による木造仮設公民館の建設
親松直輝氏 東海大学大学院建築学専攻修士2年生
下田奈祐氏 東海大学工学部建築学科学部4年生
【第2部】ディスカッション~取組事例報告から、地域の森林・木材・建築を考える
第1部報告者+
熊崎実氏 一般社団法人日本木質ペレット協会会長
藤本昌也氏 社団法人日本建築士会連合会会長
藤原敬氏 社団法人全国木材組合連合会常務理事
三澤文子氏 京都造形芸術大学通信大学院教授(コーディネーター)
この度の東日本大震災で被災された方々、および関係者の方々へ心よりお見舞い申し上げます。一刻も早い復旧・支援が求められている中で、森林・木材・木造建築関係者においても、様々な支援活動が行われています。津波、原発、産業、まちづくりなど、今後の復興に向けて考えるべきこと、行動すべきことは多岐に渡りますが、初動の支援活動の一つである応急仮設住宅の建設においても、そのつくられ方や体制、制度に至るまで、我々、森林・木材・建築関係者が考えるべき多くの問題が発生しています。
これまで、ウッドマイルズフォーラムでは、地域の森林・木材・建築の連携や木材の環境指標をテーマに開催してきましたが、フォーラム2011では、地域の力を活かした木造の仮設住宅や施設などの建設を支援している4つの活動報告、およびウッドマイルズ研究会関係者を交えたディスカッションを行い、主に地域の森林・木材・木造建築関係者の役割や今後のあり方などについて議論しました。
フォーラムには、森林・木材・建築関係者、学生、その他、50名が集まりました。概要を以下に報告します。
【第1部】取組事例報告~地域の力を生かした、木造仮設建築物建設支援の現場から
1.LIFE311被災地支援プロジェクト~岩手県住田町の地域材仮設住宅支援
水谷伸吉氏 一般社団法人モア・トゥリーズ事務局長
国内では間伐、海外では植林を中心に、地域の林業や都市の企業と共に、カーボンオフセットの推進や国産材の利用拡大、グリーンツーリズムの普及活動等を行っているモア・トゥリーズ(代表:坂本龍一氏)による、地域の木材を使い地元の工務店が手掛ける仮設住宅の後方支援活動が報告されました。
森林保全団体として、地域の森林保全や雇用に繋げたいという思いから、震災直後に支援プロジェクト構想をまとめ、その後現地の林業関係者等とも相談を重ね、このプロジェクトの実施地域を数か所あたるものの、仮設住宅は県に依頼済みのため民間団体が入り込む余地が全くなかった中で、地元産の木材を活用し仮設住宅の建設に既に着手していた岩手県住田町と出会い、震災後1カ月を経て、仮設住宅の建設資金を募るLIFE311被災地支援プロジェクトが始まりました。
住田町はFSC森林認証も取得している林業が盛んな地域で、地域の木材と地元工務店による仮設住宅は、現在93棟が完成し入居済です。町長が独自の判断で地元工務店に建設を要請したことから始まりましたが、沿岸部に隣接する住田町は被災地ではない、被災地からの依頼もないことから仮設住宅とは位置づけられないこと、及び県の従来の仮設住宅建設のルートに反する、という理由から、当初は仮設住宅とは認められず公的資金に頼ることができなかったため、民間の善意に頼る寄付プロジェクトが立ち上がりました。
住田町の取組は、その後メディアにも多く取り上げられ、県から既に建てた分を買い取るという申し出がありましたが、町長は県の態度を嫌いその申し出を断り、現在も寄付プロジェクトが継続しています。仮設住宅の入居者からは、基礎が無いので蟻が入ってくるが、とにかく結露が無い、木造なので棚も容易につくれる、等の声も寄せられています。今後も、森林保全団体による後方支援として、またこのプロジェクトをモデルとして各地の水平連携も広がるよう、取組を続けていきたいと報告されました。
LIFE311被災地支援プロジェクトオフィシャルサイト
2.手のひらに太陽の家プロジェクト~日本の森バイオマスネットワーク復興支援活動
大場隆博氏 日本の森バイオマスネットワーク副理事長/栗駒木材株式会社
日本の森バイオマスネットワークは、3年前の宮城北部内陸地震の際に被災した、くりこま高原自然学校の再生活動をきっかけとして、森林や木材に関する環境教育や家づくりに至るまでの体験学習等に加え、ペレット製造の開始に際して地域資源の活用で地方を再生しようという趣旨で発足し、昨年はJ-VERの認証も受け、CO2排出権取引プロジェクトも実施しています。
震災発生直後の混乱の中で、寒さで死者も出ているという情報を聞き、新潟の業者から20台のペレットストーブの支援を受け被災地に提供、その後も新潟を物流拠点として、全国のペレット工場からも支援を受け、避難所へのペレット、ストーブの供給を続け、合計21か所の避難所にストーブを43台設置し、全国から寄付されたペレットは約20トンにもなります。一般住宅からのペレットストーブの提供もあり、その他、薪焚き風呂やテントの設置も各地で行い、これらの支援活動は各避難所へ自衛隊が入るまでの3月末まで実施されました。
次の支援活動として、仮設住宅が是非欲しいという地元の声に答えるため、検討が始まりました。栗駒の被災の経験から、夏暑くて冬寒い、結露とカビ、騒音、地元にお金が落ちない、全てゴミになる、という仮設住宅の問題点が分かっていたので、地元の木材で地元の職人がつくる仮設住宅の提供を目指すものの、民間の支援は一切受け付けないという自治体の壁に当たり断念。一方、避難所を訪れる中で、特にコミュニティー単位で自主避難をしたところは、皆役割分担に応じて働いていて、再建するなら皆で一緒に再建したいという声がある中で、なんとか民間の方でまちづくりのきっかっけとなる住宅がつくれないかと、手のひらに太陽の家プロジェクトが始まりました。
現在は、大手企業の支援を得て登米市に建設地が決定し、NPO等の支援活動拠点、震災遺児の受け入れ、将来的には環境教育の拠点として使用できる施設を計画中であることが報告されました。
手のひらに太陽の家プロジェクト(日本の森バイオマスネットワークWEBサイト)
3.震災によって発生した廃木材の再資源化と木造仮設建築物への「復興ボード」供給の試み
内田信平氏 岩手県立大学盛岡短期大学部生活科学科准教授
はじめに身近な人達が被災し安否確認に奔走されたご自身の体験と、一斉に流された住宅、世界最大級の防潮堤を超えた被害、川を上って内陸部にも到達した津波の被害等が報告されました。岩手県の死者、行方不明者は現在約7千人。住宅の倒壊は約1万8千戸で県全体の新築着工戸数の3年分が一瞬にして消滅しました。
4月に入り、瓦礫の収集作業が始まり、関野氏(岩手大学)と県出先機関の職員と共に、瓦礫の中から良質な木材をボード化し、同時に雇用を生み出すという構想を練り上げ、ボード生産工場、パネル加工工場、県の担当課へ打診を行い、6万トンと推計される良質な木くずを可能な範囲で再資源化することが目標とされ、プロジェクトが始まりました。水産業や観光産業と共に合板産業の町でもある宮古市において、埠頭にある合板工場が甚大な被害を受けた中で、パーティクルボードの工場が幸い軽微な被害であったことが、「復興ボード」供給の試みの鍵となっています。集積場での異物除去は新規雇用者による手作業です。工場へのチップ入荷量も徐々に増加し、塩分等の化学分析もクリアし、ボード生産が本格化しています。
地元業者に対する県の仮設住宅の公募に際しては、復興ボードの活用、地域材や地元工務店による施工、プレハブと同等のスピードとコスト、断熱性能、使用後の分別解体・保管、という5つの目標を掲げ、試作も実施した上で提案されましたが採択には至らず、それとは別に、地区の集会施設の建設が復興ボードを用いたパネル化構法により実現しています。
今後は、恒久住宅や公営住宅、家具や木工品へのボードの活用を目指すと共に、建設が実現した集会施設の施工性、コストの検証を踏まえた構法の開発、および厚いボードによる水平構面の開発を目標とすると共に、本格的な復興建築物において、地域材や地場産業の活用が重要であることが報告されました。
関連報道記事(岩手日報WEB)
関連報道記事(朝日新聞WEB)
4.3.11生活復興支援プロジェクト~学生による木造仮設公民館の建設
親松直輝氏 東海大学大学院建築学専攻修士2年生
下田奈祐氏 東海大学工学部建築学科学部4年生
学生を中心に総合大学ならではのネットワークを活かし、様々な問題の解決を大学の社会的責任と捉え、活動を実践している東海大学チャレンジセンターによる復興支援活動が報告されました。新潟中越地震の際の仮設住宅建設や、毎年学生が実施している、平塚の海の家の自力建設活動の実績が、今回の復興支援の取組へと展開しています。
10年という復興計画期間を設定し、応急仮設建築物(どんぐりハウス)を建てる応急住宅、ライフメディア、コミュニティケアという3つのチームにより、支援企業や地元関係者の協力を得て活動が始まりました。どんぐりハウスはウッドブロックシステムという90㎜角の間伐材の両面に厚板を張り、断熱材を挟み込みパネル化したものを、壁、屋根、梁全てに用いたものです。大船渡市に建設された1棟目(集会施設)は、岐阜の製材所の協力を得て、岐阜の桧の間伐材を用いて学生が加工を行い、また大学内のソーラー応用技術の先生方の協力のもとソーラーパネルも設置されています。建設作業は地元の方々にも協力してもらい、毎日地元の人達による炊き出しも実施され、完成後は施設内で地域住民による町づくりのワークショップも実施されています。
2棟目は都市部の人達にも活動を知ってもらうため、新宿御苑で開催されたロハスデザイン大賞で建設し、コト部門のロハス大賞も受賞。この建物は即日解体され、石巻市に移築されています。この2棟目の建設は学生と現地の方々に加えて大工の協力も得て手早く建設することができ、企業の支援も受け児童書や本棚棟も設置されました。
学生という立場で現地の人と触れ合い建設作業をする中で、支援する側、支援される側と別れてしまうことは、支援する側の自己満足で終わってしまうのではないか。今回の活動では地元の人達に逆に元気づけられることが多く、地元の人たちと一緒になって取組み、あくまでも現地の人達を主体に、サポートという立場で支援活動を行っていく重要性を感じたと報告されました。
3.11生活復興支援WEBサイト
【第2部】ディスカッション~取組事例報告から、地域の森林・木材・建築を考える
第1部報告者+
熊崎実氏 一般社団法人日本木質ペレット協会会長
藤本昌也氏 社団法人日本建築士会連合会会長
藤原敬氏 社団法人全国木材組合連合会常務理事
三澤文子氏 京都造形芸術大学通信大学院教授(コーディネーター)
本日の4つの活動報告を聞いて本当に共感、感動しました、というコーディネーターの言葉から、ウッドマイルズ研究会関係者や会場も交えた質疑応答、意見交換が始まりました。以下に、意見交換の模様をお伝えします。
木材の調達について、地域材、木材の地産地消など
普段から地産外商が大切だと考えています。過疎高齢化の林産地で地産地消だけでは限界があり、今回も震災を契機に地産外商という視点で林業再生に結びつけることが重要で、住田町のモデルが各地へ水平展開できれば良いと思います。地産地消+αとして、ゆるやかに外に目を向けて門戸を開いていくことが大切だと思います。(水谷氏)
仮設住宅の建設により地元材の需要が増えると思いましたが、逆に地元の素材が使われない状態にもなっています。木造の仮設住宅もありますが、多くが外材だと思います。復興プロジェクト等でもっと使用してもらうよう呼びかけていますが、民間の方で需要をおこさないと難しいと思っています。(大場氏)
今までの仮設建築物とこれからの常設建築物は別と考えなければなりません。岩手の場合、3か月で1万4千戸という仮設供給の中で、地元の中小製材工場は仮設用の杭や間柱を、県の公募に採択された仮設住宅においても、地元材も他府県材も外材もと、とにかく今までは混乱でしたがこれはしょうがないです。重要なのはこれからの常設建築物の木材調達をしっかりと考えるとことです。また、県内の素材生産業者の出荷先である合板工場、製紙工場が被災し出荷できなくなりましたが、出口を一か所に集中しすぎた問題もあると改めて感じています。(内田氏)
岐阜の材を使用した理由は、震災後とにかく時間が無い中で、色々な木材業者に問い合わせましたが、仮設住宅に供給しているなど、木材が手に入らない状況でした。その中で、学生の自力建設でお世話になっていた岐阜の製材所に問い合わせたところ、桧の間伐材ならあると。学生ということもあり、いきなり被災地の業者に問い合わせても無理だと思いましたし、学生だから断られたこともありました。やはり知り合いということが実際には大きかったです。(親松氏)
地産外商は大切で、都市と林産地のバランスが重要です。地産地消では地産治水という側面も重要です。本日報告頂いた皆さんは、状況に応じて適切に木材を調達していると思います。建築関連団体の方でも、産地や質よりも、とにかくそろう材を集めるということが指示されていました。(会場)
木材の地産地消については、地域の材を地域で加工し都市部でその材を用いて建てる、という地域と都市の共存という構図があっていいと思います。ただその時には品質の管理とコストが大切で、現実的にある地域間競争を無視した木材供給は現実的でないです。最終的にはエンドユーザーが納得しないと成立しませんし、山を特定したとたんに材の価格が跳ね上がることもよくあります。川下は川上を選ぶ権利がある、というかなり緊張感を持って取り組むことが大切です。(藤本氏)
仮設住宅の制度、供給の仕組みなど
地域材や地元業者に冷淡であるという仮設住宅の問題は、短期間で膨大な量を供給しなければならない行政の立場や責任を考慮すると、既往の発注ルートから外れることは容易ではありません。全建連、全建総連、士会連合会では応急仮設木造住宅建設協議会を設立し、地域工務店による仮設住宅の公募に対応しましたが、門前払いの自治体もありました。協議会の協定では、大手の下請け価格ではなく、決めた価格でやることを盛り込みましたが、価格の面から採択されないものもありました。大きいものが社会を支配することはしかたのないことですが、成熟社会の日本としては小さいところもそれなりの地域のニーズに答えるべきで、このような現状の社会システムは変えていくべきです。大手と地域工務店が共存できる仕組みづくりが必要で、大きなテーマですが本腰を入れてやっていかなければと思っています。(藤本氏)
我々が応募した公募では、価格、技術的提案、地域への貢献、という3つの評価項目がありました。下請けであればいくらでも仕事がありますが、しっかりと利益が出なければ駄目だと強く思い、そのような価格を設定したことが敗因です。採択されたところはローコストビルダーが多いようです。今後の公営住宅では、ただ安いから、ということにならないように、情報収集や力をつけて提案していきたいと思います。(内田氏)
自治体でも今後の公営住宅の話が出ていますが、とにかく早く大量にということになると、標準仕様を全て決めて特定の会社が全て引き受ける、という状態になってしまいます。設計者も入れません。公営住宅は木造で、と提案もしていますが、敷地もないので難しいという答えです。このままでは仮設住宅の延長で公営住宅をつくる可能性が高く、士会連合会としても国へ申し入れをしていきたいと思っています。戦後の20年はそれでやってきましたが、70~80年代になって建築家も参入した良い公営住宅ができるようになりました。バブルがはじけて最近ではこのようなプロジェクトは無くなってきましたが、また戦後の20年に戻ってしまうのは嘆かわしいです。(藤本氏)
戦後、バタバタと建物を復興した結果が、今の東京の風景になっていると感じます。またバタバタと建てていくと、成熟した社会と言いながら、レベルの低い建築群になってしまうと思います。(会場)
建築界が一つになっていないことも大きな問題です。地域の建築士会や大工さんその他が皆で一丸となって知事宛てに意見書を出すなど、もう少し社会的な運動にしないと一官僚が物事を決めていく社会は変えられません。ウッドマイルズ研究会の活動の特徴の一つは、科学的根拠をもって表明して、行政の人にも地域の人にも分かりやすく提示することであり、このような姿勢で、さらには雇用問題や地域経済を含めた社会科学的視点からの根拠を加えて提言していくことが、研究会を通じて出来ないかと思っています。(藤本氏)
木質バイオマス、自然エネルギーなど
今回の震災は今後の日本の大きな変わり目になると痛感しています。当然、脱原発から自然エネルギーという流れになっていきます。太陽光、風力、地熱等の自然エネルギーがある中で木質バイオマスを考えたときに、オーストリアのことを思い浮かべました。オーストリアの経験を日本はもっと学ぶべきです。可能性とともに限界も良く見えてきます。
オーストリアでも1960年代から原発をつくってきましたが、チェルノブイリを契機に国民投票で辞めることになり、その後たいへんな思いで自然エネルギーに取組んできました。そして今、全体の25~30%のエネルギーを賄うまでに至っています。その中で一番大きな役割を果たしているのが木質バイオマスです。山の中にあるオーストリアでは風力も太陽も見込めず、頼りになるのが木質バイオマスです。日本より小さな国ですが、全世帯の熱源の20%がペレット、20%が地域熱供給で、その地域熱供給の主な熱源が木質バイオマスです。また、地域熱供給の大きなボイラーであれば熱と電気がつくれます。このプラントが現在1,550ケもあります。家が集まっているところは地域熱供給で、少ないところは各住戸のペレットで、こういう形が日本でも出来ないかと思っています。
そもそも木質バイオマスは電気だけつくるのは非合理的なので、熱もしっかり使うことが大切で、逆に熱をつくるなら電気もつくるということが、ヨーロッパでは買取制度等で可能になっています。オーストリアの小さな町では、他からのエネルギーの購入を辞め、地域でエネルギーをつくり同時に雇用も生みだす、というエネルギーの自立を目指しています。この形を是非、被災地の復興で実現してほしいと思っています。日本ではパイプラインのインフラがありませんが、復興ではそこから計画することも可能です。被災地に地域熱供給を希望する自治体があり、今後関係者と検討を進める予定です。(熊崎氏)
今日の報告で、ペレットの業界が力を合わせて支援している姿はとてもすばらしいと思います。ストーブも支援する人たちもたくさんいます。もともと日本は木をエネルギーにつかってきましたが、それを化石燃料で全て変えてしまったのです。今回の震災を機に少しずつ変わっていくのではと感じています。オーストリアと日本が異なるのは、第二次大戦後もずっと木のストーブを使い続け、その改良を続けてきたことです。だからあれほど普及しているのです。ペレットの大規模工場もできて主要産業になり輸出しています。日本では工場の規模も小さくコストも高くなってしまいます。オーストリアは材が集まってくるシステムもしっかりしています。(熊崎氏)
皆さんたいへんな中で、たくさん送ってくれました。バイオマスのネットワークの強さを実感しました。ペレットの価格は灯油に勝たなければ普及しないので安く供給していますし、輸送費もかかるので近場で集めています。もちろん大規模工場ができれば価格も下げられます。チップもやっているので月に千トン以上の原材料が集まりますが、それをつくる工場そして消費地もない現状では、まずは消費地をつくるための投資をして、結果として大規模工場ができればいいと夢見ています。そうすれば20円/㎏というヨーロッパ並みの価格になり、灯油にも対抗できます。(大場氏)
さいごに
今回提案した復興ボードは、この名前で売り出すのはこの1~2年のみだと考えています。今年と来年で瓦礫は片付けたいです。今までのボードの原料は隣の合板工場等の端材を使ってやってきて、最近は解体廃材も使っていました。この合板工場が復旧するまでに瓦礫を活用し、復旧した時には瓦礫も全て片付いているということを願っています。ただそれで終わりではなく、いつも縁の下の力持ちであるパーティクルボードをもっと知ってもらうことにも寄与したいです。構造用面材としてももっと使えるものにしたいです。パーティクルボードは廃材で作られているリサイクル品ですが、それに比べると原木から作られる合板はとても贅沢な材料です。(内田氏)
皆さんの活動に共通しているパワーやエネルギーを改めて感じました。ウッドマイルズ研究会も一緒に色々なことができる形にしていきたいですし、ウッドマイルズ研究会の役割も改めて感じましたので、これを機に研究会の活動も一歩進めていきたいです。(藤原氏)
ヨーロッパでは建築の断熱性能が良くなってきて、今までのストーブでは大きすぎるので、低温で安定したボイラーやストーブが出てきています。太陽熱をボイラーによって冷房につかうシステムもあります。製造、輸送のエネルギーに加えて、居住のエネルギー含めても総合的に考えていくことが大切であると思います(熊崎氏)。
4つの事例が、現実にきちんと対応していることに感動しました。支援は地元の人たちが大事であり支援する側が主役ではありません。ここ数カ月建築界全体が色々なことをやっていますが、地元の人よりも専門家としての自己満足という部分があるのではないかと思います。本当に地元の人の支援になっているか冷静に考える必要があります。我々はあくまでも後方支援として対応していかなければいけないと、今回の報告から改めて感じました。(藤本氏)
建築士会では、地域コミュニティーを再生できるコミュニティーアーキテクトについて議論していますが、かつてのコミュニティー論では、みんな仲良くしましょう、ということを言っていましたし、計画側の人間が使う言葉でしたが、今は行政のサービスでも民間のサービスでも足りない部分を、地域でお互いに助け合う相互扶助の必要性が言われていて、つまりコミュニティーが必要だから、という時代に入っています。公の力だけでも個人の力だけでもうまくいかない、ということを皆悟っています。これからは共助として、お互いに支えあってコミュニティーを再生していくべきで、その時に建築士は共用できる空間・事業を町の中にしっかりと作っていく必要があります。今日の4つの報告は皆、公に頼るだけでなく、お互いに連携して助け合って実現しているものであり、これからの共助の実現性をとても強く感じました。(藤本氏)
終了後、報告者の内田さんから、知人が勤めている釜石市藤勇醸造の、津波をかぶり品質には問題ないが商品にならなくなった醤油が紹介され、岩手から持参された5本がその場で完売しました。
本日ご報告頂きました皆様、本当に有難うございました。
(文責/ウッドマイルズ研究会事務局)
- 作品名
- フォーラム2011
- 登録日時
- 2011/07/21(木) 20:42
- 分類
- 2011年度