ウッドマイルズフォーラム2009~森林・木材・家づくり、持続可能な循環を目指して!
日時/2009年6月27日(土)13:00~17:30
場所/AP浜松町 Aルーム
主催/ウッドマイルズ研究会
後援/(社)大日本山林会、(社)日本建築士会連合、(社)全国木材組合連合会、(財)日本住宅・木材技術センター、森想人、(株)茨城県南木造住宅センター、東京家づくり工務店の会、北海道美幌町
第1部:座談会「森林~木材~家づくり、持続可能な循環を目指して、進むべき道を語る」
〔森 林〕箕輪光博氏/(社)大日本山林会副会長
〔木 材〕藤原敬氏 /(社)全国木材組合連合会常務理事
〔家づくり〕藤本昌也氏/(社)日本建築士会連合会会長
(司会進行)三澤文子氏/(有)MOK-msd代表
第2部:活動事例報告会「森林~木材~家づくり、連携の実践事例に学ぶ」
①森を想う4人の設計者が結成した「森想人/神奈川の水源の森と都市をつなぐ活動」
鈴木直子氏/住工房なお(株)代表取締役
②地域の家づくりのプロが集まった「つくばスタイル木の家クラブの活動」
中村泰子氏/つくばスタイル木の家クラブ事務局長
③地域工務店が手を結んだ「東京家づくり工務店の会/東京森の木の家プロジェクト」
池田浩和氏/岡庭建設(株)統括リーダー
④持続可能な森林経営を中心とした自治体政策による「美幌発、低炭素な町づくり」
澤畠雅俊氏/北海道美幌町経済部耕地林務グループ主幹
低炭素社会を実現するためには各分野の温室効果ガス削減対策だけではなく、各々が連携し全体として持続可能な循環型社会を創ることが求められます。炭素吸収源としての森林・木材の地産地消による輸送削減や地域活性化・膨大な炭素を固定する木造住宅など、森林~木材~家づくりという循環は、持続可能な循環型社会において欠かせない重要な視点です。森林~木材~家づくりという循環において、私たちは今、どのようなビジョンを持ち、どのような道を進むべきかについて、環境貢献の「見える化」および「連携」を切り口として、森林、木材、家づくりに携わる3者による座談会、および様々な立場で今後具体的にどのようなアプローチが可能であるのかについて学ぶ活動事例報告、という2部構成によるウッドマイルズフォーラム2009を開催しました。官公庁関係者、森林・木材・建築関係者、学生、その他一般など、総勢63名が集まりました。以下にフォーラムの概要を報告します。
『開会挨拶』
『昨年より、建築という研究会の中でも川下の人間として、熊崎氏よりウッドマイルズ研究会会長を引き継ぎました。建築の世界は耐震偽装事件以降、建築基準法や建築士法の改正に及び、ここ数年たいへんな時代です。法律があまりにも厳格化しすぎるという意見もありますが、木造建築物をさらに難しいものにしています。しっかりとした木造建築を手続きが煩雑化することなく作れるよう、法整備が求められますが、ここ1、2年は混乱状況が続くと思われます。一方で建築は本来夢のある仕事でもあり、国交省では来年にかけて建築の基本法を作ろうという審議会が始まりました。建築基準法は建築の最低限の質を定めていますが、社会資本としての建築は、最低限ではなく、質の高い物としてあるべきで、この質の高い建築とは構造等の性能だけではなく、環境問題等、社会的要請に答えられるものであり、これらをいかに客観的に評価するかが、建築基本法のポイントです。国と国民が協力して宣言するような法律が作られると思います。ウッドマイルズ研究会でも、環境に着目し、皆が納得できる客観的評価(見える化)の技術を高め、普及していくことが目標になっています。本日のフォーラムでも様々な知見を共有して頂けたらと思います。(藤本会長)』
第1部:座談会「森林~木材~家づくり、持続可能な循環を目指して、進むべき道を語る」
〔森 林〕箕輪光博氏/(社)大日本山林会副会長
〔木 材〕藤原敬氏 /(社)全国木材組合連合会常務理事
〔家づくり〕藤本昌也氏/(社)日本建築士会連合会会長
(司会進行)三澤文子氏/(有)MOK-msd代表
(左より、箕輪氏、藤原氏、藤本氏、三澤氏)
※下記、概要のみ記載。座談会の詳細記録はこちら(PDF 64KB)
→ファイル 33-7.pdf
はじめに、各々の立場から現在の状況や課題について
はじめに、森林、木材、建築という各々の立場から、専門や活動、現在の状況や課題について、3名の先生方よりお話がありました。
箕輪さん『森林経理の視点からは、工業化による自己増殖と資源の減少という、社会が二極分離している状況です。これからはその中間領域である資源循環社会を目指し、森林経営においてもエコロジーを含めたより広い、大きな循環の中でその価値を捉えるべきで、ウッドマイルズに象徴される環境をはかる動きにその力があります。』
藤原さん『輸送環境負荷という物理的距離と、森林と消費者という心理的距離という2つの側面において、木材利用と地球環境を考えることがウッドマイルズの目的です。ウッドマイレージが極めて大きい日本発の運動でもあります。』
藤本さん『建築士会連合会の、地域材による地域住宅づくりの普及活動において、ウッドマイルズは一つの武器になり、書籍「環境の時代と木造住宅~地産地消の家づくりに向けて」を発行しました。今後講習会等を行う予定です。また一方で国の長期優良住宅の普及において、国産材利用も含めた全建連のプロジェクトが主要な動きをしています。さらに最終的にはエンドユーザーが理解しないと普及せず、地域材、地球環境という点を、家づくりのユーザーに理解してもらうために、川上川下の人達が何をすべきかが課題です。』
ユーザーの盛り上がり、山側は大丈夫? 木材の品質は?
設計者である進行の三澤さんより、ユーザーから木材の履歴や森林認証材への要望が増えてきていることが指摘され、地域材をますます利用した場合、山側は大丈夫なのか?という問いかけに対し、
箕輪さん『森林所有者不明の問題、および再造林が出来ない現状、という2つが現状の森林の最大の課題であり、国や業界もそれなりの努力と成果をあげていますが、山の将来をしっかりと考える森林認証や森林計画の制度がもっと機能しなければなりません。また頭では分かっていますが、CCV(サークル・チェーン・バリュー)が重要であるとした活動をどう展開するかなど、山から町まで具体的にどのような連携をつくるべきかが大きな課題で、各々の関係者の情報交換もまだまだ希薄です。』
藤原さん『ユーザーも供給者も木材がエコであるという認識が定着しつつあり、木材なら何でも大丈夫なのかということが次のテーマであること、全木連の合法木材や森林認証など、消費者の認識を裏切らないことが重要な点です。』
三澤さん『各性能を明示することが問われている設計業界もたいへん厳しく、リスクを負って木材のような性能が不確かなものを使う設計者は少ないです。』
藤本さん『木材性能を明示する状況は二十数年前とあまり変わりません。現在取組んでいる地域材の公共建築においても、こちらの要求と産地の認識のズレがあり、協議を重ね、工期も1年延ばすことで何とか実現している。』
川上~川下の連携、山側の努力は?
藤本さんより、現在国が提唱しているワンストップサービスや書籍「環境の時代と木造住宅」の事例に触れ、川上から川下までの専門化同士の情報、連携が分断されている問題や、地域で川上と川下が連携して住まい手が納得いく家を提供するという活動は、オールジャパンでやるのは無理があり、県や各地域単位で運動としてゲリラ的に行うこと、かつキーマンとなる人が必要で、その一つの運動体として、また川上と川下の出会いの場として、ウッドマイルズ研究会が機能すると良いとされました。
また会場参加者より、二野宮さん(新潟県)から、新潟県でもようやくカーボンオフセットやウッドマイルズへの取組が始まりつつある現状報告や、中桐さん(山梨県)から林業現場からの意見として、循環利用に対する指導や人材が不足している現状が訴えられました。研究会前会長の熊崎さんからは、CO2削減を踏まえた木質バイオマス利用を考える際には、住宅の熱エネルギー利用が最適である点や、日本の林業が日本の建築需要に答えられていない現状、皆で協力しなければウッドマイルズを減らすことはできないこと等が指摘されました。
これらに対し箕輪さんより、この問題はとても根が深いので、簡単に山側の努力が足りないとは言えないと反論があり、『社会の要請に技術的に答えられていないと言われますが、日本の林業の保続政策やその後の高度経済成長期の木材自由化など、過去の歴史によるところが大きく、日本の林業技術の不足や努力して来なかったということが原因ではなく、日本の産業政策全体の問題として捉える必要があり、常に社会全体をどう捉えるかという頭を持っていないと、技術だけの議論ではリスクがある』と指摘されました。
最後に藤本さんより、川上・川下の連携はやはりやらざるを得ず、川上・川下で連携して、実践で戦える7人の侍のような集団を我々が作っていく必要があり、ウッドマイルズ研究会もこの一集団であることが訴えられ、座談会は終了しました。
第2部:活動事例報告会 「森林~木材~家づくり、連携の実践事例に学ぶ」
①森を想う4人の設計者が結成した「森想人/神奈川の水源の森と都市をつなぐ活動」
鈴木直子氏/住工房なお(株)代表取締役
「森~川~海の生態系はひと繋がり、木を使うことが水源の森を守ります、子どもたちに伝えたい森からのめぐみ」をキーワードに、国産材・地域材ではなく水源の森の木にこだわった、自然素材による家づくりを手掛ける女性4人のグループです。
平成19年度より神奈川県では水源税が始まり、県境を越えた上流山梨の森林整備等にも使われていますが、水の大切さを認識し水源の森の木を使うことで、こども達にもよい環境が残せるという想いから、森想人では活動を森の活動、森の遊びに徹しています。女性・母・妻であるという一般消費者に最も近い立場であることを生かし、また自然素材の家はアトピーやアレルギー対策もありますが、やはり衣食についてもこだわって欲しいと、住だけではなく衣食についてもこだわり、マクロビオティックの料理教室等も含めた出前教室を行っています。
山側のNPO等との連携により、水源探検や伐採・製材所の見学なども開催され、山に行くだけではなく山からも家を見に来てもらう、山でも住まい手が見に来てくれることで、自分達の仕事の価値が認められていると、そういう関係づくりを広げるべく、また森での活動を原風景としてこども達に教えていくことで、木と暮らすことがあたりまえの世の中になるのでは、という想いで活動しています。
活動をしていて神奈川のお母さん方に必ず「神奈川に木はあるの?」「木は伐っていいの?」と聞かれるので、もっと活動を広げようと、森の入口として開催されている川崎ネイチャーフェスティバルに参加、そして桂川・相模川流域の木で家を作る会にも参加し、山梨の林産地との連携で、流域の木を使ったマンションのリフォームなども手掛けています。現在は山から直接丸太を購入、製材するという木材支給で行われていますが、リスク配分のためにも将来的には工務店も輪の中に入れることが目標になっています。
その他、もりおもいびとたよりの発行や、割箸など、丸太を無駄なく使う商品開発にも関わり、割箸工場新設の資金や協力も募っています。4人なので力不足である点と、想いばかりが先走ってしまうこともありますが、やはり想いがあってはじめて実現すると思っています。
森想人のHPはこちら
②地域の家づくりのプロが集まった「つくばスタイル木の家クラブの活動」
中村泰子氏/つくばスタイル木の家クラブ事務局長
つくばスタイル木の家クラブは、茨城県つくば市を拠点に、県産材による木の家づくりの情報発信を行うため2006年8月に発足し、木の家づくりについて、いいものを選ぶための知識と選択肢を得てもらうために、地域材や地域の職人、気候風土といった地域の力を生かして行っていくために、家づくりに関する各分野のプロが集まりました。
クラブは、木の家づくりに興味のあるエンドユーザーの方(メンバー)を中心に、木材、不動産、建築といった各分野の専門家(サポートメンバー)が取り囲む形で、事務局を茨城住まいの情報館(いばらきの家モデルハウス内)に設置し、専門家とエンドユーザーが直接対話のできるイベント開催やメール等による情報発信を行っています。イベント活動は、家づくりワークショップ、現場見学会、組子コースター教室、メンテナンス教室、緑のカーテンづくり、森林見学会などで、今年からは家を建てた人をメインに植林ツアーが始まっています。茨城県は北部に優良な木材産地があるにも関わらず、県南部ではそのことすら知らず、神奈川と同様に「山梨に木があるの?」ということが一般的です。県内の木材流通も無い現状に対して、活動を重ねる毎に繋がりをつくり、木材を購入できるようになってきています。
県産材住宅の事例は、茨城県より茨城住まいの情報館としての認定を受け、様々な情報発信が行われている「いばらきの家モデルハウス」や、県の指導も受けながら開発を進めてきた地域適合住宅「つくばスタイルいばらきの家(児玉先生監修)」などがあり、構造材、仕上材は全て茨城県産のスギ、ヒノキで、パッシブデザインも取り入れています。県産材を使って環境に貢献できるなら使いたいというお客様がたくさんいて、100%県産材で建ててもらっています。また、超長期優良住宅先導的モデル事業に採択された「大樹のめぐみ超長期モデル」は、7寸の茨城県産の通し柱を使い木材を多く使うこと、また、家づくりへの参加を促すしくみとして木の家クラブの活動への参加、技術の伝承のための親子または師弟関係の2世代の大工さんに建ててもらうことが条件になっています。
県産材を産直で使ってきて見えてきた課題は、品質が安定しないこと、及び小規模な工場が多く乾燥機が無い(時間がかかる)ことで、小規模かつ短期間の備蓄倉庫を整備し、小規模業者の協働だからこそ出来る、現場の意見を取り入れたオリジナル部材の供給も始まっています。運営協議会による県産材認定シールのラベリングも行い、倉庫自体に木材の情報ステーションとしての機能も備えています。山~木材~建築~ユーザーという情報ネットワークを強化し、エンドユーザーが実際に求めているものを提供できるように、その中心として「つくばスタイル」木の家クラブが機能するよう努めていきたいと思います。
つくばスタイル木の家クラブのHPはこちら
③地域工務店が手を結んだ「東京家づくり工務店の会/東京森の木の家プロジェクト」
池田浩和氏/岡庭建設(株)統括リーダー
岡庭建設は東京都西東京市で「みんなでつくる家」をブランドとして、特に設計に力を入れ、木材の材料強度も確認しながら自社で構造計算もしています。また住まい手を喚起するための家づくり学校にも取組み、様々な課題に対して住まい手と一緒に作っていくというユーザーとの交流も大切に、ブログ等も通じた岡庭ファミリーを作っています。
東京家づくり工務店の会は、「品質の良い家を造り、守り、技術・職人の永続性を図り、健全な経営で存続していくこと」、「契約前と契約後の言動に非対称性のないこと」「一定レベル以上の工務店の連携で内外に啓蒙活動をしていくこと」を理念に、昨年9月に各々高い実力を持つ、創建舎、参創ハウテック、田中工務店、岡庭建設という東京の工務店4社が集まって発足し、4社各々の異なる立地から東京全体をカバーしています。SAREX(住環境価値向上事業協同組合)、自立循環型住宅研究会、ウッドマイルズ研究会等、様々な勉強会にも共通して参加していて、4社で各々の工務店を評価し合うことで各々の信頼性を向上させる集まりを作ろうと言っていたことや、長期優良住宅モデル事業へ挑戦しよう、ということが会の発足のきっかけです。その他、OZONE家づくりサポートシステム、ザ・ハウス、という施主とのマッチング会社や全建連にも参加しています。
東京家づくり工務店の会では、互いの社員・職人・現場の交流、共有によりお互いの進歩やスムーズな工事、メンテナンスを促す、万一1社が倒産してもグループで家守りを継続する、山側と連携し林業の活性化や地球環境へ配慮する、ということを目指し、①日本の森、東京の森の活性化(多摩産材を使った地産地消)、②インターンシップ(工務店・職人の存続、小学生に対するキャリア教育)、③住宅技術・設計力・施工力向上(勉強会、講師活動)、④家守りへの取組(メンテナンス体制・技術的担保の仕組みづくり、⑤長期優良住宅、について取組んでいます。
長期優良住宅先導的モデル事業に今年度再び採択された「東京/森の木の家プロジェクト2」は、多摩産材活用の意味と根拠の明確化、工務店としての環境配慮と環境対応力の強化、住まい手の省エネルギー・資源有効活用の意識を行動へ喚起、という3つの考えに基づき、「見える化」に特化し、住まい手の理解を得るための「見える化」の手法として、ウッドマイルズ、自立循環型住宅による評価、環境家計簿を使用しています。そしてこれらの結果をWEBで公開し住まい手を喚起する仕組みをつくっています。また家守りロードマップ(修繕費用の計画)や、4社による独自の完成保証制度の確立、家歴タイムカプセルによる住宅記録保存などの取組もあります。
集まった以上は本気でやろうと毎月定例を行い、ホームページや冊子も作成しています。一番大事なのは住まい手に伝えることです。ウッドマイルズについてもまずはつくり手が使っていくことが大事で、その波及効果で住まい手に伝えていくことが大事です。東京家づくり工務店の会も積極的にセミナーを開催し住まい手に直接伝えています。まだ1年経たない会ですが、多くの問い合わせをもらっていて、波及効果がでて来ています。
東京家づくり工務店の会のHPはこちら
④持続可能な森林経営を中心とした自治体政策による「美幌発、低炭素な町づくり」
澤畠雅俊氏/北海道美幌町経済部耕地林務グループ主幹
北海道東部の美幌町は、航空の利便性も高く観光や農業が盛んな地域です。美幌町では幅広い低炭素な町づくりへの取組を行っています。美幌町は人口約2万2千人、森林率62%、カラマツ・トドマツの人口林率が約62%の町です。FSC森林認証および流通過程のCoC認証を取得し、循環型の森林づくりに取組むと共に、間伐材によって住宅を建設し、端材は木質バイオマスとして利用するという木材の自給自足構想に基づき、住宅では美幌町産材活用住宅認定基準をつくっています。
北海道の北の木の家制度(JAS認定による構造材)、及び北方型住宅制度(住宅の性能担保)を利用して、地域材を使うだけではない基準が設けられ、町による助成や地元金融機関の協力による利子軽減もあります。木材の全ての流通過程が町内で、かつCoC認証を取得していることや、1㎡あたり0.1m3の木材使用量かつ10m3以上の使用が条件になっています(助成は1m3あたり3万円、かつ上限75万円までとなっています)。平成19年度の制度開始移行、住宅個数、町産材利用量ともに、年々増加しています。町産材活用住宅によるCO2削減効果については、ウッドマイレージCO2及び高気密高断熱による環境負荷低減として、1件あたり灯油消費量換算で年間18140リットル分と試算しました。
また、国の補助事業も展開しています。昨年度の21世紀環境強制型モデル住宅(環境省)では、FSC認証地域材の使用、ウッドマイレージCO2の低減、温度差や雪氷熱などのローカルエネルギーの活用などを盛り込んだモデル住宅の提案が採択され、一方で地域住宅モデル普及推進事業(国交省)では、美幌.木夢クラブ(びほろどっとこむくらぶ)による5棟のモデルハウス計画(BIHORO.COM ECOLAND~GUEST)が採択されています。さらに、建築用材以外の木の利用についても、チップやペレットとして積極的に資源化する試みを行っています。
山づくりの方でも、エアドゥの航空により排出されるCO2を森林で吸収する取組や、美幌町を含めた北海道4町(美幌町、下川町、足寄町、滝上町)による坂本龍一氏代表のmore Treesとの協定(間伐オフセットの試み)など、カーボンオフセットを中心とした企業等の参入が進んでいます。昨年のJ-VER策定以前からの武蔵工業大学の学生さんとの、美幌町の森林管理を利用したオフセットプロジェクトも展開し、その他、木質ペレットストーブや太陽光発電の普及、バイオディーゼルの実証試験、こども達への木育、公共施設への地域材活用など、幅広く展開しています。
美幌町耕地林務グループのHPはこちら
質疑応答・コメント
会場からは、「地域材を使う上で最初のハードルとなるのは品質であり、含水率やヤング係数は確保できているのか」という意見や、「民間レベルでは積極的な取組がたくさんあってすごいと思うが、公共施設についてはやはり工期がとても厳しく、建築サイドの理解が足りない。行政の中で、森林~木材~建築の連携を図り、単年度発注というやり方を見直して欲しい。工期を無視した昨今の国の補助事業のやり方も改めて欲しい」等の意見が出ました。
行政関係の参加者からは「全ての自治体がそうではなく、努力している自治体もある」、「今回のフォーラムのテーマを進める上でも、国の行政との連携は重要であり、長期優良住宅などの住宅政策においても、国産材利用など、省庁間の連携が図られつつあるので、今後も行政との対話に努めて生きたい」との声も上がりました。
一方で、「影響力の大きな長期優良住宅の採択において地域材はどのような扱いなのか?」という質疑も展開されました。
最後に、第一部講師の方々から、
「皆さんの積極的な活動に感心しました。また行政の話しでは、国交省では地域材、ウッドマイルズ等の認知度が高まっているが、環境省では地域材の認知度が低いようにも感じました。(三澤)」
「中央も都道府県も行政は環境に対して今後力を入れていくので、ウッドマイルズの関係者の協力も得つつ、行政との関係を積極的に作っていけたらと思います。また地域材の利用について、施主にどのように理解されていくのか、具体的な現場の話もまた伺いたいです。(藤原)」
「長期優良住宅はこれまでの住宅のつくり方へのアンチテーゼとして、とても期待しています。これが日本の文化や地域を支え、同時に山を支えることに繋がると思います。4名の方々の熱心な活動にも感動を覚えました。ウッドマイルズという尺度や、事例にもありました技術の継承への取組などは、森林認証と結びついて持続可能な森づくりに展開すべきものだと思います。今の社会のように未来を割引くのではなく、将来の価値を割引かずに保続するということ、またそれを保証する制度を行政が作らなければならない、単年度ではなく何十年という事業を作っていかなければならないと思います。(箕輪)」
というコメントを頂き、フォーラムは終了しました。
- 作品名
- フォーラム2009
- 登録日時
- 2009/07/19(日) 17:00
- 分類
- 2009年度