ウッドマイルズフォーラムin美幌
~木材の環境指標の連携と地材地消を目指して~
日時/平成21年4月18日(土)13:30~17:30
場所/美幌町民会館 第2ホール(北海道網走郡美幌町東2条北4丁目)
主催/北海道地域材活用事業産学官連携実行委員会
共催/ウッドマイルズ研究会
後援/北海道森林管理局、北海道木材産業協同組合連合会、北海道木材青壮年団体連合会、北海道、美幌町、HoPE建築関連研究会
町産の森林認証材を活用した低炭素な家づくり支援や、森林バイオマス吸収量活用カーボンオフセットなど、先駆的な取組を進めている北海道東部の美幌町において、CO2の見える化、持続可能な森林、ウッドマイルズ、地材地消の家づくり等をテーマとした、基調講演+パネルディスカッションによる「ウッドマイルズフォーラムin美幌」が開催されました。
フォーラムには道内の関係者約40名が参加し、吉田良弘氏(実行委員会副会長)、及び土谷耕治氏(美幌町長)の挨拶によって開会しました。
…美幌町の低炭素な取組(概要)…
※美幌町産材活用住宅助成制度
※ 美幌町の低炭素な町づくりの概要(PDF 3.09MB)ファイル 30-1.pdf
【第1部】基調講演
『持続可能な森林経営とCO2の見える化を目指して』
箕輪光博/(社)大日本山林会副会長/林野庁木材利用に係る環境貢献度の「見える化」検討会座長
1972年の「成長の限界」の警告にもかかわらず、現在の世界恐慌、マネーゲーム…といった我々を取巻く現状に対し、指数曲線的な量の拡大ではなく、量の縮小・質の多様化が大切であるとし、森林・木材利用による炭素蓄積やドイツでも実証されている循環モデルなどを紹介すると共に、森林を産業資本から社会共有の資本へ、そして非循環からの脱却を目指し、CO2の見える化に代表される「間接効用の見える化」が重要であると説明されました。
また今後の具体策として「環境マーケティング」が重要であるとし、大量生産・合理性・コストダウンによる新生産システムは、あたりまえの経済行為であり、さらに立木の成長力など、多様な価値の相互認識が必要であり、その1つがCO2の見える化であると、ただしCO2の見える化だけでは無い、今後は循環・連鎖する価値でなければ評価できない、と強調されました。
後半は、昨年度林野庁でとりまとめが行われた「木材利用に係る環境貢献度の定量的評価手法について(中間とりまとめ)」の概要が説明され、最後の質疑応答の場面では「囲碁」の世界の「見えないもの」の重要性や、ホワイトボードを用いて「iの二乗=-1」という博士の愛する数式の解説も力説されました。
【第2部】パネルディスカッション
『各地の実践活動から木材の環境指標の連携・統合の可能性を探る』
(パネリスト)
木材調達における環境指標~合法木材とウッドマイルズ
藤原敬/(社)全国木材組合連合会常務理事/ウッドマイルズ研究会代表運営委員
顔の見える認証材で人・環境に優しい家づくり
高橋広明/美幌.木夢クラブ会長/(株)高橋工務店代表取締役社長
地材地消と北の木の家づくりの実践
武部豊樹/NPO北の民家の会常任理事/武部建設(株)代表取締役社長
(コメンテーター)
箕輪光博/(社)大日本山林会副会長、古俣寛隆/北海道立林産試験場企画指導部研究職員
(コーディネーター) 滝口泰弘/ウッドマイルズ研究会事務局長
<前半:パネリストの活動紹介>
はじめに、ウッドマイルズ研究会代表運営委員の藤原さんより「ウッドマイルズ」の概要として、輸入材のウッドマイレージ、木材の輸送エネルギー比較、北海道産材の輸送における環境貢献が紹介されました。また、環境に優しい木材とするためには違法ではない合法伐採であることも重要で、合法性の確保やウッドマイルズの算出において、情報の正確さやコスト削減という観点からも、産地と消費地の「近さ」がポイントになると指摘されました。
次に、地元美幌町の美幌.木夢クラブ(ドットコムクラブ)代表の高橋さんより、町のFSC、CoC認証材を使った家づくりが紹介されました。北海道が進める「北方型住宅」や「北の木の家」の基準にも応じた、総合的に環境に配慮した家づくりを、木材生産・加工・流通・建築関係企業グループにより実践されており、美幌町の呼びかけによりはじまった活動は、徐々に実績(戸数)が伸びています。今年度は国交省の長期優良住宅も含めたモデルハウス5棟(エコランド)の建設が予定されています。
最後に、NPO北の民家の会常任理事の武部さんより、民家再生を中心とした活動が紹介されました。単なる民家再生ではなく、高気密高断熱による「暖かさ」、おしゃれなデザイン、により顧客の満足を得る。さらには、手ばらし解体にこだわり、大工技術の要請、ゴミの削減にもこだわり、地材地消の家づくりを実践する中での様々な試みが紹介されました。また、カラマツを立木から購入する家づくりや、200年住宅(HABITA)にも取組むなど、さらに幅広い実践活動にも取組まれていました。
<後半:ディスカッション>
様々な環境指標を実践する上での具体的な課題という点から議論がスタートしました。FSC、CoC認証材については、納期のばらつきがあること、コストUPになることで、コストについては町の助成があるから何とかなっている。合法木材については、国のグリーン調達の鍵ではあるが、実ニーズが少ないこと、等があげられました。また、最終的なエンドユーザーの意識としては、「環境」へのニーズは非常に高まっているが、イニシャルコストだけではなく長期的なスパンのコストを総合的に評価する(時間価値)社会が必要であるとされました。
循環社会をつくる上で1つの鍵となるCO2の見える化については、数値が見えることはとても大切で、今後「お金+CO2」という価値をどのように作り出していくのがが課題であるとされた一方で、CO2の見える化だけではないことも再度強調されました。LCA研究の立場においては、ライフサイクルの範囲の設定やCO2以外の温室効果ガスの扱い等とても難しいテーマではあるが、最も影響の大きいCO2という視点やCO2の見える化は正しい一歩であるとされました。
最後に、フォーラムにご参加頂いた、東京農業大学教授の黒瀧さんも交え、CO2を含めた見えない価値の見える化、関係者の連携、それを可能にする社会システムの構築の必要性について言及され、フォーラムは閉会しました。
- 作品名
- フォーラム(美幌)
- 登録日時
- 2009/04/23(木) 11:00
- 分類
- 2009年度