ウッドマイルズワークショップ2015
日時/平成27年7月23日(木)13時30分~16時45分
場所/林友ビル6階中会議室
主催/一般社団法人ウッドマイルズフォーラム
(プログラム)
①ウッドマイルズのこれまでの活動や成果の概要報告
②会員内外からの活動報告
・協和木材株式会社/代表取締役 佐川広興氏、東京営業所 営業企画課課長 安池淳二氏
・株式会社共和/浜北営業所所長 鈴木景士氏、総務部総務課長 斎藤正俊氏
・合同会社++(たすたす)/共同代表社員 安田知代氏
・木の建築賞/NPO木の建築フォラム理事(有限会社こころ木造建築研究所代表取締役)山崎健二氏
③意見交換会
トレーサビリティーや輸送エネルギーの視点から木材供給を「見える化」するウッドマイルズレポートや、多面的に5つのモノサシで木材の調達方法をはかる「木材調達チェックブック」の発行など、これまで生み出してきたツールや成果を今後どのように活用すべきか、さらに、地域の木質資源の持続可能な利活用への幅広い支援など、ウッドマイルズフォーラムは社会に対して今後どのような貢献をしていくべきかについて、会員関係者やその他参加者を交えた意見交換会を開催しました。
ワークショップには、会員内外から32名が集まりました。概要を以下に報告します。
フォーラム配布資料はこちら(5.85MB)
ファイル 2-2.pdf
開催記録(PDF版)はこちら
ファイル 2-3.pdf
【開会挨拶】
藤本昌也氏/一般社団法人ウッドマイルズフォーラム会長
昨年度は一般社団法人ウッドマイルズフォーラムの初年度として活動方針の基盤整備等を行ってきた。今年度からはいよいよ本格的な活動開始となるため、本日のワークショップでは今後の活動に対する議論を活発にして頂きたい。
一会員としては、精緻な数値化をして客観性をもって運動を続けたいという思いもあるが、同時にウッドマイルズは我々の活動理念を象徴的に示す言葉であり、地域材を使いたいという地域へのこだわりのある運動は一般市民にも共有して頂ける理念だと思っている。昨年来川下側の立場から、地域材の活用を通じて我が国の山村と都市の幅広い安定した地域連携の構築に寄与する運動をしていきたいと申しているが、震災復興の木造住宅の現場ではなかなかうまくいっていない実情もある。ものづくりの視点から地域連携の考え方を市民と共有できれば、新しい暮らしやすい町ができるのではと期待しておりこれからが勝負なので、ウッドマイルズフォーラムでもこのような活動に関わって行ければ、また手法等についても議論できればと思っている。
【ウッドマイルズのこれまでの活動や成果の概要報告】
滝口泰弘/一般社団法人ウッドマイルズフォーラム理事
※配布資料はこちら→ファイル 2-14.pdf
2003年のウッドマイルズ研究会発足以来12年、国産材の自給率向上や地域材を取り扱う地域の家づくりグループの増加など、国産材や地域材を取り巻く状況はかなり変わってきており、ウッドマイルズに求められるものも発足当初とは異なってきている。2014年からは一般社団法人ウッドマイルズフォーラムを発足させ、地域の木質資源の持続可能な利活用に関する普及支援活動として、木材利用に関する懸賞事業や木材事業者の認定事業も始めたところである。
ウッドマイルズ研究会発足当初は、輸入材と国産材、地域材の輸送エネルギーの差異に着目した都道府県産材の環境貢献PR資料や、環境指標を用いた自治体の認証制度(京都府、屋久島町)に組込み活用された。木の家づくりの現場では、ウッドマイルズ関連指標の算出やウッドマイルズレポートを用いて、地域材による家づくりの販促ツール、及び長期優良住宅等の補助事業提案の環境貢献PRツールとして、木材生産者についても同様に自社製材品のPR資料として活用された。
調査研究の分野でも国際学会への発表や森林総合研究所との共同研究を通じて、木材の輸送エネルギー分野の研究を進めてきた。一方でカーボンフットプリント(CFP)の登場と共に、木材生産のライフサイクルエネルギーにおいては、ウッドマイルズだけでなく乾燥エネルギーが重要であることも分かってきた。
その他、普及活動として、フォーラムやセミナーの開催、算出技術者の認定、川上川下連携の先進事例研究など精力的に活動を行ってきたが、最終的にはウッドマイルズだけでなく多面的に木材調達を評価するための木材調達チェックブックの開発に至っている。
【会員内外からの活動報告】
①協和木材株式会社/代表取締役 佐川広興氏、東京営業所 営業企画課課長 安池淳二氏
※配布資料はこちら→ファイル 2-15.pdf
昭和28年に創業。塙町は昔から八溝産を中心とした木材を関東に提供していた林業・製材業が盛んな地域。山林伐採から製材加工、製品販売を一環として行っており、流通の合理化によるコストダウンも図っている。ユーザーは主にハウスメーカーだが、最近はバイオマス発電用のチップも増大している。今の発電所の計画量は現在の木材生産量と同じ、つまり現状の2倍の量の木材を山から出さなければ賄えないというものであり、燃料用の低質材が本当にそんなにあるのか議論になっている。
製材部門は年間約30万m3の原木消費量で、工場は24時間稼働している。木材乾燥に木屑ボイラーを使用しているが、24時間ボイラー管理はたいへんだが、発電も考慮すると止める訳にもいかない。騒音もかなり出るので、町中の小規模工場では不可能。製品は、構造材、羽柄材、2×4材、集成材、オガ・チップ。2×4材や集成材については、国産材化も進めている。杉の無垢材はクレーム対応の観点からハウスメーカーには受け入れられなかった。
環境に負荷をかけずに木材製品を利用して、人々の生活も成り立つよう、持続可能な森林経営に特に配慮している。森林資源の最も価値のある利用の推進が経営理念である。
営業の観点からは、流通を省いて合理化している以上、より営業力が必要でウッドマイルズもその一環として活かしていきたいと思っている。特に国産材の利点をユーザーにPRすることがとても難しく、大規模化によるコスト競争力だけでなく、ハウスメーカーのCSRの観点も含め、環境貢献を強くアピールしていく必要があると考えている。
②株式会社共和/浜北営業所所長 鈴木景士氏、総務部総務課長 斎藤正俊氏
※配布資料はこちら→ファイル 2-16.pdf
住宅建設のための木材、新建材、住宅設備商品、設計サービス、建設工事まで幅広く手掛ける静岡県の総合住宅資材商社。今回は事務局を引き受けている、一般社団法人静岡木の家ネットワークの活動について紹介する。補助金目的で集まった団体ではなく、地域の工務店がお互いに力を合わせ切磋琢磨していこうという考えでスタートした。リーマンショック後の不況下において、地域密着型企業の工務店は決して潰れてはいけないという信念のもと集まったことがきっかけとなった。理念・目的・事業は全て地域工務店に関するものである。
現在は71社の会員で、環境共生(温熱教室、省エネ設計コンペ等)、工務店力向上(長期優良住宅推進、地域材の活用等)、リフォーム・リノベーション(長期優良住宅化リフォーム、住宅医スクール開催等)、住まいの学校(一般ユーザー向け勉強会等)、という4つのワーキンググループの活動を精力的に行っている。その他視察ツアーや会員の振興を深めるレクリエーション、地域型住宅グリーン化事業の取組、JBNとの連携等も行っている。
天竜杉の産地として、木材の地産地消による環境貢献という視点で、ウッドマイルズの活動ともつながっている。さらに、より長く使用するように元々あるものを活かし使っていくことや、CO2の削減を通じて持続可能な社会づくりに貢献することを基本的な運営指針にしている。静岡木の家ネットワークでは、長期優良住宅やゼロエネ住宅の普及、地域材の使用促進や大工技術の継承、既存住宅の改修促進や一般ユーザー向けの住宅教育の実践について、今後の課題として議論を深めている。
③合同会社++(たすたす)/共同代表社員 安田知代氏
※配布資料はこちら→ファイル 2-17.pdf
三鷹で3年前に会社を発足。それまでは企画編集等の仕事で木材は素人だが、3.11以降色々な関わりの中で、生態系と人の営みが調和する社会をつくるという理念の元、会社を立ち上げた。主な事業は企画編集やワークショップの開催と、東京のスギ・桧の木製品ブランド(SMALL WOOD TOKYO)の運営で、メイン商品が東京の木の「敷くだけフローリング」。本格派の無垢の床を自分たちだけで敷くという商品で、木材を気軽にたくさん使えることに着目し、敷くだけなので賃貸物件でも可能であることがポイント。DIYで楽しみながらマイペースで敷けるのも特徴。無塗装のスギ、ヒノキなので気持ちよく評判も良い。部屋の寸法をミリ単位で正確に測り、設計し、届けているので素人にも容易に施工できる。
2年半で90件(1,133畳)販売。マンション、アパオート、戸建て、店舗、オフィス、コワーキングスペース、保育園、幼稚園などに納品。特に新築購入後に合板フロアが嫌なので注文される方も多い。暖かくなった、素足になった、気持ち良い、結露が減った、雰囲気が良くなった、心が穏やかになったなどの声を頂いている。
東京都では2006年から花粉対策事業として多くの木が伐採されており、このような背景の中で構造材に使えないような木材を内装材として利活用している。東京育ちのスギ・ヒノキを東京多摩地域の製材所が製造・加工し、東京の合同会社++が販売している。
今後は、山や林業家との連携、他社製品との差別化や多様な広報活動、オフィス・施設への営業に取組みたいと考えているが、その中でウッドマイルズを用いた地産地消の優位性もアピールしていきたい。
④木の建築賞/NPO木の建築フォラム理事(有限会社こころ木造建築研究所代表取締役)山崎健二氏
木の建築賞の詳細はこちら
今年度からウッドマイルズフォーラムと共催することになった木の建築賞(NPO木の建築フォラム主催)について紹介する。NPO木の建築フォラムは600~700名程度の会員で、公開フォラム、各種講習会、耐力壁ジャパンカップ等を開催しており、その中の一つが木の建築賞という懸賞事業。全国を4地域に分けて4年で全国を一巡するやり方で、今年で第11回目(関東甲信静岡地区)となる。木材を使った建築作品や活動を対象としていて、これまでも全国の幅広い作品・活動に出会ってきた。活動は木材利用だけでなく技術や文化の継承等、年々幅広くなってきている。
具体的な選考スケジュールは、はじめに8月下旬に書類による一次選考があり、その後10月中旬に、本事業のメインイベントである公開プレゼンテーションによる二次選考会を開催。二次選考会は毎年各地の特徴的な建物で開催し、翌日はオプションとして地域の建物見学会等も開催している。その後さらに選考委員による現地選考を経て、年明け1月の最終選考会で最終決定を行っている。授賞式は毎年5月に東大で行われる木の建築フォラム総会の場で行われている。事業の運営費は、各企業や団体、個人からの協賛金で賄っている。
今年はウッドマイルズフォーラムからも選考委員を出して頂き、活動については幅広い目でしっかりと審査ができる体制を整えている。建築も小さな住宅から大きな施設まで幅広く応募しているが、最近は本当に多様な応募作品が増えている。今年も多くの方々からの応募を期待していると同時に、推薦も含めて幅広く告知にご協力頂きたい。
【意見交換会】
(三澤氏:ウッドマイルズフォーラム理事)
静岡木の家ネットワーク又は(株)共和さんでは、静岡の天竜材の利活用についてどのように取り組んでいるか。またその際にウッドマイルズの評価はユーザーにも分かりやすいと思うので一般向けセミナーでも取組んで頂くと良いと思う。
(鈴木氏:(株)共和)
静岡木の家ネットワークは工務店だけでなく地域材供給事業者も入っており、根底に地域材の利活用というものがある。関連する補助金も整備されているが、補助金目的ではなく、ウッドマイルズも含め家づくりの本質的なところについて、子供から大人まで幅広く伝えて行きたいと思っている。
(藤原氏:ウッドマイルズフォーラム理事)
補助金目当てのグループも多く立上っているようだが、補助金が無くなった時にもインセンティブを与える力がウッドマイルズにはあると思っているが。
(鈴木氏:(株)共和)
補助金目当てで出来たグループは、それだけでは補助金が無くなったら維持できないと思うので、補助に頼らないコアになる事業をしっかりと作っていくことが大切だと思う。家づくりにおいて、ウッドマイルズも含めた環境配慮無しでは地域で住み続けられない、という所を住まいの学校を通じて訴えて行きたい。
(榎本氏:ウッドマイルズフォーラム理事)
各々異なるユーザーを持っている4つの報告について、各々のレベルのユーザーの今の環境意識を知りたい。数年前にウッドマイルズ研究会で木材調達チェックブックを作った時は、品質や価格が先に立ち、環境貢献等への意識はまだまだ低いという議論があったが。
(佐川氏)
主な納入先のハウスメーカーがどのように考えているかだが、合板やサイディング等についてもCFP商品が結構出てきている。このような動きに太刀打ちして行かなければならないという不安の方が今は大きい。
(齊藤氏)
一般ユーザーは今、ネット等でかなり勉強されていて、CO2の削減等についても質問が増えている。これに対してちゃんと提案しなければならないと思っている。ネットワークの工務店も勉強熱心で、会の活動を通じてユーザーに提案できるレベルを保っていきたい。
(安田氏)
事業を始めてまだ数年だが、お客様の反応として、環境情報が優位になっているとは思えない。まずは、無垢の木が気持ちいいとか、素敵とか、おしゃれとか、どうせ使うのだったら国産材、という理由で選ばれていると思う。弊社WEBの検索キーワードも、無垢の木、床、DIYが多い。
(山崎氏)
木の建築賞の応募者を見ると、意識が高いのは大前提になっている。
(榎本氏)
皆さんのお答えから、やはり定量的なところも大切だが、定性的なところでユーザーに訴えかえることが大切と感じた。
(松下氏:ウッドマイルズフォーラム理事)
以前多くの一般の方にアンケート調査をした時に、工務店が木材を選んだ場合はコストが優先で、自分で木材を選んだ場合はコスト以外のことが優先されていて、優先順位が明確に分かれていた。かつては製材所のユーザーは家を建てる人だったが、それからは工務店や業者がユーザーとなったため、現状ではコスト優先の木材供給になっていると思う。今後、地域の資源を地域で活用し循環するというウッドマイルズの視点としては、一般ユーザーにシフトした観点がより重要になる。協和さんのような大規模製材所の場合、地元への貢献はどのようになるのか?影響力はとても大きいと思うので、地域の工務店やユーザーへの貢献という視点も増やして頂けると良いかと思うが。
(安池氏)
ハウスメーカーだけでなく、木材市場や問屋へも出荷しているので、需要側の声を聴きながらやっていかなければならない。また、地域の雇用に対しても、一定量の製材を維持しなければならないと思っている。ただ、地場の動きも需要側に近いので、昨年度から地域型住宅ブランド化事業の事務局として参加し、ユーザーとより密接な関係を築いていきたいと思っている。
(藤本氏)
静岡木の家ネットワークの活動を聞いて考えさせられた。設計者、大工、製材など、やはり人材育成をやっていると思った。私が関わっている町づくりの活動を見ていると、全く異なるやり方や視点の人材が育たないと、今の多用化しているニーズに答えられないと感じている。昔の仕事のやり方とは全く違うやり方で展開し、成功している人達がいる。静岡の活動でも新しい仕事のやり方をする人材が出てくると思うし、そのような人材が出てこなければ、これからの住宅を巡る様々なニーズに対応できない。
(鈴木氏:NPO木の家だいすきの会)
10数年前から埼玉で地域材に関わる活動をやってきたが、今は工務店が地域材を使うことは直ぐできるようになってきている。一般ユーザーについては、当初は森とつながっていることを強調してセミナーや伐採見学会等をやって、環境貢献を一種のセールスポイントにしていたが、環境貢献は売りではなく隠れたベースメントとすべきだと今は思っている。現在の活動では一人一人のユーザーに寄り添うことが一番大切で、このような人材育成が必要だと感じている。また、今後のNPOとしての存在意義は何かが課題である。ウッドマイルズフォーラムは持続可能な地域社会の構築を目的に掲げているが、地域材を使うことで、本当に森林の持続可能性や地域の暮らしの持続可能性が確保できるのか、NPOとしては切り込んで行きたいと思っている。
(吉澤氏:(株)中島工務店)
岐阜の木による産直住宅を長くやってきているが、ハウスメーカー等の台頭で、無垢の木の家や大工の仕事を知らない人が増えてきたのがこの10年。東京で言うと年配で物の良さが分かるお客様が増えていると感じる。若い人でもハウスメーカーでは物足りない人も増えてきている。東京に居ると川上の情報は全く関係ないが、しっかりと説明して理解してもらえると、川上の山のことや木材のことについても、分かってもらえるようになってきていると思う。
(松下氏)
諸塚村で産直住宅に関わっているが、山や地域への還元が出来なければ続かないので、ウッドマイルズの視点をそのように捉えなおしても良いと思う。
(青木氏:ナイス(株))
持続可能、山への還元、しっかりとした林業、工務店が木の家をちゃんと受注する仕組みづくり、色々な指標等も活用して需要創造につなげていくことに力を入れて行きたい。環境については、ウッドマイルズ、CFP、森林整備、植林等、総合的な持続可能な取組が出来てPRするところまで行かないと、一般ユーザーへまでは浸透できないと思うので、これらについてもしっかりと検証して取り組んで行きたい。
(滝口)
一般ユーザーや社会のニーズが多様化しているという話が出たが、ウッドマイルズフォーラムとしても、多様化しているニーズに応じて、会員及び関係者の方々の力を借りて、今後とも柔軟な活動をやっていきたい。
以上
- 作品名
- ワークショップ2015
- 登録日時
- 2015/08/03(月) 14:30
- 分類
- 2015年度