サステイナブル建築世界大会報告
9月27日~29日、東京の高輪プリンスホテルで サセテナブル建築世界会議東京大会(SB05TOKYO)が開催され、世界80カ国から 1800 人の関係者が集まりました。建築を環境面から見直していこうというコンセプトはウッドマイルズ研究会の理念を共有する絶好の場であり、研究会から4名が参加し、学術プログラムでの研究発表をするとともに、関係者との意見交換をしました。
研究発表の場は第1日目のポスターセッションでした。発表のタイトルは「木材の輸送エネルギーとウッドマイルズ」 Energy consumption through timber transportation and the Woodmiles : The Possibilities of the Woodmiles Indexes for Evaluation of Building”、ウッドマイルズの背景となった木材の輸送距離の負荷についての説明 をするとともに、 日本の三大木材ドーム(出雲ドーム、大館樹海ドーム、宮崎木の花ドーム) の構造材の輸送過程の環境負荷を比較し、構造材の取得過程による環境負荷の違いを明らかにし、ウッドマイルズ指標の有効性を検証したものです。
ポスターを前にして、各国の建築の環境評価に関心を持つ関係者と意見交換を行うこことができました。建築資材の輸送距離の研究負荷のついては初めて聞いたので新鮮な インパクトを受けたという途上国の関係者もいましたが、すでに建築物の輸送距離について評価システムに組み入れている米国のLEEDの関係者からは、 輸送手段によって負荷が大きく異なるという点に関心を持ってもらいました。また、我が国の研究者の中に輸送過程加工過程の化石資源からの排出量も念頭にした 研究を発表している方もいて、貴重な意見交換ができました。
大会で報告は大会の発表をいくつか聞いていて、ウッドマイルズの理念を踏まえた報告がいくつかあったのは心強いことでした。
その一つは、OM研究所の、The traial and verification to energy sufficiency building in Hamamatus city「浜松市でのエネルギー自給建築 の実験と実証」と題する報告です。OMソーラー協会の新社屋「地球の卵」のコンセプトを、再建築と開発、ゼロエミッション、エネルギーの自給のという観点から説明し、 測定データを報告するものです。
この中で、近くの山の木で作った「地球の卵」の特質を、ウッドマイルズという概念を援用して評価し紹介されていました。
二つめは、立命館大学の方の Carbon mass balance related to architectural wood based on material flow analysis 「マテリアルフロー分析に基づく建築木材に関連した炭素物質均衡」と題する報告です。森林の吸収源の機能をはかる場合、収穫すなわち排出となっている京都議定書の第一約束期間の規定は、特に建築関係者にとって問題の多い記述です。本報告は伐採後の建築に利用される木材の炭素ストックと循環過程を推計しようとしたものですが、その過程で、木材の輸送過程の排出エネルギーについても重要なパラメータとして推計の対象としいることがユニークな点です。
このように、ウッドマイルズ研究会が提唱してきた、木材の輸送過程の環境負荷を取り上げた報告がいくつかなされたことで、研究会の今までの活動のインパクトが着実に 広がっているということの実感できました。
今回の大会の最も重要なテーマであった「建築物の環境評価手法」についてのたくさんの報告の中で、各国、各機関で開発された手法が紹介されていましたが、 その中に「近くの資材を利用した建築にプラスの評価を与える」というコンセプトが多く取り入れられています。ウッドマイルズ研究会で主張している考え方が海外に 広がりを見せる基盤があることがわかりました。
この点については、すでに米国の緑の建築基準 LEED についてバンクーバーでの報告がなされていますが、もう一つ、 iiSBE を紹介します。 iiSBE は International Initiative for a Sustainable Built Environment (持続可能な建築環境のためのイニシアティブ)の略で、オタワに事務局を置く国際的な 機関です。 ( iiSBE トップページhttp://greenbuilding.ca/iisbe/start/iisbe.htm )
その活動の一つに 15 カ国の協力によるグリーンビルディングチャレンジであり、そこで生み出されたのが GBTool です。概要を示す文書を読んで関係者の説明を 少し聞いただけなので、全体の仕組みを十分に理解した上で説明するわけにはいきませんが、国際機関である iiSBE が大きなパラメータの枠組みを示しベンチマークの 数値は各国の条件に応じて決めてゆくという仕組みになっているようです。包括的なパラメータは、課題、カテゴリー、パラメータという階層になっており、 課題 B 「エネルギーと資源の消費」の中のカテゴリー B5 「資材」にパラメータ B5.7 「地域で生産された資材の計画的使用」と記載があります。このパラメータが どんな考え方で採用されているのか、どう計測されるのかという点については、残念ながら今回の取材ではわかりませんでした。
そのほかに報告された数多くの国の評価ツールの中で近くの資材をどう評価しているかということは大変興味があり、手当たり次第に聞いてみましたが、 LEED の他にもポルトガルなどいくつかの国の手法の中に組み込まれていることが、断片的ですがわかりました。
また、日本の CASBEE の関係者と話していて、この中にも地域材を使うということに得点を与えることになっているといういことに、はじめて気がつきました (「 Q-3 室外環境」の中の、「3地域性・アメニティへの配慮」の中の、「1土地が持っていた場所の記憶への配慮、地域文化の継承」の中の、「 2) 地域の産業や、 人材・技能の活用(地場産材の利用、地域の技能の活用など)」が大の場合に2点が配分されている)。
今大会のすべての発表論文を掲載したプロシーディングがデジタルデータで提供されています。また、今回知り合った人脈を頼りに、少し体系的な調査をしてみたら どうかと思っています。会員や読者の中で関心のある方は事務局まで連絡下さい。情報の共有をはかり今後の研究会活動としての方向を相談したいと思います。
- 作品名
- SB05TOKYO
- 登録日時
- 2005/09/27(火) 12:00
- 分類
- 2005年度