ウッドマイルズミニセミナー2007 in 東京
3/24(土)に、関東地区初のセミナー「ウッドマイルズ ミニセミナー 2007 in 東京 (地元の木を使うこれだけの理由 出版記念)」が、東京で開催されました。2003年の6月に、森林・木材・建築関係者の有志により設立されたウッドマイルズ研究会は、活動4年目を迎え、家造りや森林行政、研究など、活動が多方面に広がっています。そんなウッドマイルズの今を、全国の関係者16名による執筆のもと、活用事例等も含め「ウッドマイルズ 地元の木を使うこれだけの理由」という書籍にまとめました。今回のセミナーはその出版記念でもあり、関東地区へ向けた活動の出発点でもありました。
会場には、ウッドマイルズ研究会関係者のほか、出版社の方や関東地区の森林木材建築関係者や環境団体の方々など、多くの関係者にお集まり頂きました。
セミナー会場は、東京都の有形文化財でもある求道会館で、当日のセミナー開始前には、月1回の建物一般公開も開催され、館長でもあり、創設者の子孫でもある、近角真一さん(株式会社集工社 建築都市デザイン研究所代表取締役)による説明会が行われ、多くの方々が参加しました。京都大学建築学科の創設者として有名な建築家、武田五一設計によるこの建物は、教会堂でありながら寺院という独特の建物であり、かつては、創設者近角常観の説教を聴きに、立ち見を含め、毎回数百人が集まっていたそうです。このような会場をお借りして、ウッドマイルズセミナーが始まりました。
セミナーには、緑の列島ネットワーク代表や東京の木で家を造る会会長等を歴任された、建築家、長谷川敬さんをコメンテーターにお招きし、今回の執筆内容の概要を4人の講師によるリレー講演という形で紹介しました。
開会挨拶
熊崎実/岐阜県立森林文化アカデミー学長
講演に先立ち、熊崎実会長より、開会の挨拶も含め、現在の林業や木材の問題点等をお話頂きました。北欧などの林業先進国に比べ、木材のコストや品質など、何故これほど日本が駄目になったのかについて、日本の林業や木材業界が進めてきた政策の問題点等を踏まえ指摘されました。
1「ウッドマイルズとは何だろう~森林と消費者の距離が明かすもの」
藤原敬/(社)全国木材組合連合会常務理事
バイオマスエネルギーを始め、製造エネルギーも少なく自然循環資源として注目を浴びている木材だが、森林の持続可能性、トレーサビリティー、違法伐採と、未だ信頼を得ることができない我が国の木材の実態や、ウッドマイレージという指標から見える、世界でも特異な私達な木材消費の態様、木材や建築物の環境評価としてのウッドマイルズの今後の可能性など、マクロな視点からのウッドマイルズの概要が報告されました。
2「近くの山の木は環境にやさしい~木造住宅の新たな環境指標」
滝口泰弘/NPO法人WOOD AC代表理事
具体的なウッドマイルズ関連指標や木造住宅への適用例に続けて、実際にウッドマイルズを主要なコンセプトとして、近くの山の丸太から造られた木造公共建築物のウッドマイルズの効果についての説明があり、定量的に評価する重要性が訴えられました。また、今回の書籍を執筆して頂いた各地の活動や研究分野での取組が紹介され、各分野へ広がるウッドマイルズの今が報告されました。
3「木の家づくりとウッドマイルズ~民家型構法から森林文化アカデミーの木造教育へ」
三澤文子/岐阜県立森林文化アカデミー教授
民家型構法の提案から林産地との連携による家造り、阪神淡路大震災から木造教育へと、地元の木に係わるこれまでの軌跡から、現在の岐阜県立森林文化アカデミーでの教育の取り組みが紹介され、ウッドマイルズは、地元の木を推進する技術的コンセプトとして、有意義なものであり、山と町をつなぐ上でも、分かり易く使いやすい指標であることが報告されました。
4「林業政策とウッドマイルズ~京都府産木材認証制度の取組」
白石秀知/京都府農林水産部林務課課長補佐
全国に先駆けて、ウッドマイルズの概念を自治体の制度に組み込んだ、京都府産木材認証制度(ウッドマイレージCO2認証制度)について、その制度の背景や京都府の山の現状、制度の仕組みや、京都府の家造り支援などの取り組みや実績が報告されました。
意見交換会
まず始めに、コメンテーター長谷川氏より、様々なウッドマイルズの利点や可能性として、ウッドマイルズは扱っている範囲が異業種に渡り広く、自治体等の枠に捉われないことや、指標自体が単純明快で分かり易い点、日本だけではなく世界に対しても非常に説得力があること等があげられました。また、教育や実務の中の実体験と無結びつき、山と町、人と人を結びつけることが重要であることも述べられました。
その後会場から、下記のような指摘や意見が述べられました。
・ ウッドマイルズは国産材振興を目的として出発しているが、昨今の外材輸入環境の変化に伴い、大手製材工場や合板工場の国産材利用が進んでいる。国産材が多く使われるようになった時に、ウッドマイルズによって、より地産地消を推進することになると、各々の地域で、例えば合板工場が必要となり、他のエネルギー問題が発生するのではないか?
・ 国産材の利用推進については、輸送距離だけではなく、品質やシックハウス等の問題をしっかりとクリアする等も含めたトータルな視点が必要である。
・ 地域材の品質について、例えばJAS認定は、現実的にあまり有効でないのではないだろうか?
最後には、近角さんより、ウッドマイルズの活動が一研究分野ではなく、実践的に幅広い活動が実践出来ている点を評価して頂いたと共に、大型物件の実際の建築現場では、木材に対する認識がまだまだ低く、多くの問題点があることも指摘されました。
ウッドマイルズのセミナーは、事務局が岐阜県にあることから、岐阜、滋賀、京都にて数多く開催してきましたが、今までは林産地であり、地元の木を使った家造り等を実践しているグループが多く存在する地区でのセミナーであったのに対し、東京(関東地区)は最大の木材消費地域でもあり、地元の木に対する情報や制度、事例や活動等が、まだまだ少ないという印象を受けました。また、セミナー終了後の懇親会で出た、地元の木の運動は、ただ関係者が集まってグループを作るだけでは駄目で、ウッドマイルズのような何らかの技術的コンセプトが無いとうまく行かない、という話題が印象深いです。今回のセミナーをきっかけに、ウッドマイルズを含めた、関東地区での「地元の木」のネットワークを活性化させることが出来るような活動の重要性を認識しました。(文責/ウッドマイルズ研究会、滝口)
- 作品名
- セミナー東京
- 登録日時
- 2007/03/24(土) 12:00
- 分類
- 2006年度