ウッドマイルズフォーラム2018
「国内外の違法伐採対策とクリーンウッド法~環境に優しい木材のリスクヘッジの現場から-」
(開催概要報告)
日時/2018年7月26日(木)13:30~16:45
場所/文京シビックセンター 26Fスカイホール
主催/一般社団法人ウッドマイルズフォーラム
ウッドマイルズフォーラムでは、木材の地産地消をテーマに地域材や顔の見える木材の利用を推進していますが、公共施設や木質バイオマスなど国内の木材利用が拡大するにつれ、木材の合法性を確認する意義がより高まっています。
世界では違法伐採問題に対する様々な取組が行われており、我が国でも2017年5月にクリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)が施行されました。
ウッドマイルズフォーラム2018では、木材利用による環境貢献と共に、輸入材等の環境リスクにも焦点を当て、国内外の違法伐採対策とクリーンウッド法について、基調講演~取組事例報告~意見交換会を行い、理解を深めました。
フォーラムには会員内外から73名が集まりました。
【基調講演1】
『世界の木材流通と違法伐採対策の現状』
三柴淳一氏/国際環境NGO FoE Japan理事
FoE Japanで主にフェアウッドの活動をされている三柴さんより、米国とEUの木材貿易の現状や違法伐採対策の法規制(改定レイシー法、EU木材法)の仕組み、罰則、執行事例、我が国の制度との違い等の解説から、生産国の具体的な違法伐採事例として、日本の木材輸入相手国であるルーマニア(製材、集成材輸入が主)、マレーシア(サラワク州)(合板輸入が主、日本が最大の顧客で合板の約50%が日本へ)について、過剰伐採、偽造刻印といった明確な違法行為、森林の持続可能性に対するリスクが大きい事例などが紹介されました。
我が国の違法伐採事例や、来春から森林環境税とセットで施行される森林経営管理法、温暖化防止活動においてキーワードになっているZero Deforestation(森林減少ゼロ)についても解説して頂きました。
【基調講演2】
『合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)について』
河野晃氏/林野庁木材利用課 林業・木材産業情報分析官
林野庁の河野さんより、昨年5月に施行されたクリーンウッド法について、法制定の経緯から法律の概要、対象となる物品や事業者、合法性確認の方法等について解説して頂きました。クリーンウッド法では、川上の第一種木材関連事業者には、木材のデューディリジェンス(DUE DILIGENCE:当然払われるべき努力、相当な注意義務、を意味する。木材調達においては、違法でないことを確認するための確認や調査、を意味する)が、建築事業者も対象となる川下の第二種木材関連事業者には発行された書類の確認等が求められています。
クリーンウッド法の詳細、及び各国の合法性に関する情報が確認できる林野庁WEB内の情報提供サイト「クリーンウッド・ナビ」や、7/18現在の登録事業者一覧(117件)についても紹介されました。
【取組事例報告1】
『ジャパン・ナッシング時代に国産材ができること』
木村司氏/JBN(全国工務店協会)国産材委員長・木村木材工業(株)代表取締役社長
国産材の素材生産事業者かつカナダの輸入材も取扱っている木村さんより、カナダの輸入材は様々なデータからも違法性は全く感じられないが、大規模であればあるほど伐採者の顔が見えないため、国産材のような顔の見える信頼性の確保は輸入材には難しい点や、木材輸入国として日本の地位が低下している現状が報告され、また、国産材素材生産者として、ウッドマイルズ(輸送距離)に着目した輸送コスト低減の重要性や機能表示木材という国産材の新たな動きも紹介されました。
クリーンウッド法については、ビジネスをやるものとして会社の姿勢を示すものだと、そして同じ姿勢の者同士がコミュニティを作っていくことが重要だと訴えました。
【取組事例報告2】
『双日木材調達方針とクリーンウッド登録について』
中島祐二氏/双日株式会社 リテール・生活産業本部 林産資源部 担当部長
世界中で様々な事業を展開している双日グループにおいて、植林~製造~貿易を行っている林産資源グループを担当されている中島さんより、環境・資源・人権等のサステナビリティ目標を基本としたサプライチェーンCSR方針、及び木材調達方針について報告して頂きました。
木材調達方針の具体的な運用については、2020年度までにトレーサビリティが確認できる調達木材を100%にするという定量目標から運用組織フォレストイレブンの発足、WWFジャパンの林産物チェックリストを用いた評価やレベル別の評価、さらにはリスクが高い仕入先について共に改善していく取組等について紹介されました。クリーンウッド法の登録はこの8月で全関係会社が登録完了予定です。
【取組事例報告3】
『住友林業グループ-責任ある木材調達の取り組み』
飯塚優子氏/住友林業株式会社 CSR推進室長
クリーンウッド法登録第1号の住友林業でCSR推進を担当されている飯塚さんより、創業時の保続林業の理念から国内外の各種事業の展開、現在のグループ環境方針、木材調達方針等について報告して頂きました。
2020年度を目標年度とする住友林業グループCSR中期計画の策定、SDGs(2015年に国連で採択された持続可能な開発目標)の目標の織り込み、持続可能な木材取扱量の数値目標や木材調達委員会によるマネジメント、デューディリジェンス実施の具体的な取組や現実的な課題について、さらには、近年増加している環境的評価を重要視する投資家への情報開示の取組や社外評価が高まっている現状についても紹介して頂きました。
【質疑応答・意見交換会】
(コーディネーター)藤原敬/ウッドマイルズフォーラム理事長
フォーラムの最後に、短時間ではありましたが、リスクが高い産地の木材の調査や取扱い方法、国内の産地の経営的な持続可能性、国産材の違法伐採対策、合法木材とクリーンウッド法の違い等、会場も交えた質疑応答を行いフォーラムは閉会しました。
ご参加頂きました皆様が、普段取扱っている木材についての持続可能性や合法性等について、改めて考える一助になれば幸いです。
- 作品名
- フォーラム2018
- 登録日時
- 2018/07/28(土) 18:39
- 分類
- 2018年度