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過去の国際学会参加、セミナー開催
※過去の国際学会参加、国際セミナー一覧はこちら

WCTE2008(第10回木質構造国際会議(宮崎)

 2008年6月2日から5日にかけて、宮崎観光ホテルにて、WCTE(10th World Conference on Timber Engineering)という、木質構造に関する最新の技術・研究・設計手法等に関する発表や情報交換を主目的とした国際学会が開催されました。世界37カ国から総勢約500名が集まり、材料工学や木質構造、地震工学、歴史伝統、環境などの44の分科会やポスターセッション、企業団体展示(和光コンクリート工業・日本ツーバイフォー建築協会、住友林業、一条工務店、マイウッド・ツーなど)が行われ、各地各様の技術開発や調査レポートが報告されました。開会に先立った実行委員長(有馬氏)の講演では、再生可能である木質資源の意義や代表的な杉の産地である宮崎等が紹介されました。ウッドマイルズ研究会も「資源・環境」のセッションで活動を発表しました。開催期間中は梅雨前線と台風の影響であいにくの天気でしたが、その分会議に集中できる4日間となりました。

 

ウッドマイルズ研究会関係者(岐阜県立森林文化アカデミーの三澤教授や小原講師、北海道立林産試験場の大橋研究員ほか)による各々の分野での発表もありました。ウッドマイルズ研究会は、「ウッドマイルズ研究会の活動からの教訓(藤原敬、滝口泰弘、白石秀知、相馬秀二、松下修)」と題して、昨年度行ったウッドマイルズレポートモニター事業を中心に発表しました。以下、その報告の概要です。

Lessons from the activities of the woodmiles forum
(ウッドマイルズ研究会活動からの教訓)



報告論文テキスト(PDF)
発表パワーポイント(PDF)

1:Establishment of the Woodmiles Forum and its background
(ウッドマイルズ研究会設立の背景)

日本の輸入木材の産地からの輸送距離が他の輸入国に比べて遠距離であり、木材輸送距離過程の二酸化炭素排出量が生産過程の数倍になるケースがあることなど、研究会設立の背景を紹介。

2:Activities of the Woodmiles Forum
(研究会の活動紹介)

宮崎開催にちなんで、以前SB05TOKYOで発表した日本三大木造ドームのウッドマイルズ調査レポート(出雲ドーム、大館樹海ドーム、木の花ドーム:宮崎)を紹介。

宮崎市内の木の花ドームの構造用集成材は耳川流域のスギを当該流域で製造し宮崎市内まで133km輸送しています。出雲ドームの場合はオレゴン州のラジアータパインの構造用集成材でできており9272kmの輸送距離。木の花ドームの構造用集成材を輸送する段階で発生する二酸化炭素は37トンでそれをオレゴンから運ぶと、340トンとなり、その二酸化炭素を同じ面積のスギ林で吸収させると100年くらいかかります。
「日本三大木造ドームのウッドマイルズ評価」詳細はこちら

3:House built with timber harvested from hearby forests and woodmiles report
(近くの山の木で作る家とウッドマイルズレポート)

昨年度行った、近くの山の木の家を売り物にしている住宅メーカーや工務店をサポートするためのウッドマイルズレポート活動の中から、熊本のS住拓のレポートのサマリーを紹介。普通の家と九州材にこだわるS住拓の木材の輸送過程の二酸化炭素排出量を比べると4342kgとなります。これを、①直径1メートルの風船4342個分、②スギの木314本が分が吸収する二酸化炭素の量、③ガソリン1888リットルを燃焼させた時に放出される二酸化炭素排出量、④京都議定書第一約束期間における家庭部門必要削減量(年間)の○年分、⑤クールアース50(50年までに排出亮を半減)を軽くクリア、等としてPRしたレポート。その後に行ったアンケート調査では、ガソリンや灯油に置き換えてPRすることが最も分かりやすいという結果を得ました。



4:Conclusion
(ウッドマイルズ活動のこれから)

ウッドマイルズは建築物LCAの全体からすると、一部に着目した指標に過ぎません。それなのにある程度のインパクトが加えられたのは、第一にシンプルな分かりやすい数字(ウッドマイレージCO2)が提示出来たこと、第二に木材自体への再生可能、ローインパクトという興味が集まりつつあること、第三に大量消費の中で消費者が選ぶときに誰が何時どこで製造したかなど全くわからないで選択しているが、ウッドマイルズは生産者のところまでさかのぼる魅力があることです。今後は、木材の由来に基づき環境負荷を評価する森林認証や合法性証明、フェアウッドキャンペーンなどとの連携、さらには、建築物をトータルに評価するCASBEE建築物環境性能総合評価システムなどとの連携した活動が重要と考えています。

発表後の会場からは、日本の消費者は少しでも安い木材を求めるのが実情だが、その中でウッドマイルズはどの程度受け入れられるのか、という質問もあり、これに対しては「通常商品に求められるものは、機能性能、デザイン、環境、があり、優先順位は環境が最後になってしまうのが現状だが、最近は環境性能を求める消費者や環境を大きな売りにする企業も出てきているので可能性はある、努力していきたい」と答え、報告を終了しました。
また、地球温暖化防止が国際的に急務となる中で、このWCTEでは「環境」に関するセッションがこの1つしかなく、もう少し増やすべきではという意見や、より環境やエネルギーに特化した国際会議(FLEAなど)に参加すべき、という声もあり、研究会の今後の活動にとっても貴重な示唆を得ることができました。次回のWCTEは2010年トリノにて開催されます。


過去の国際学会参加、国際セミナー一覧

2008.6.2-6.5 WCTE2008(第10回木質構造国際会議)(宮崎)
「Lessons from the activities of the woodmiles forum(ウッドマイルズ研究会の活動からの教訓)」発表
→参加概要報告(PDF)

2006.7.4-7.7,7.14 ウッドマイルズセミナー(シドニー)&森林製材所視察
シドニー郊外にあるUNSW(The University of New South Wales),Ulladullaにて
→セミナー・視察報告(PDF)

2005.9.27-9.29 SB05TOKYO(サステナブル建築世界会議)(東京)
「Energy consumption through timber transportation and the Woodmiles
:The Possibilities of the Woodmiles Indexes for Evaluation of Building
(木材の輸送エネルギーとウッドマイルズ)」ポスター発表
→参加概要報告(PDF)

2005.8.22-8.24 Conmat05(建築材料世界会議)(バンクーバー)
「Evaluation of Timber as Building Materials on Energy Issue and the Woodmiles
:The Background and the Development of the Woodmiles Forum in Japan
(建築資材としての木材のエネルギー評価とウッドマイルズ指数の開発:
日本におけるウッドマイルズ運動の展開とその背景)」発表
→参加概要報告(PDF)
 

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