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ウッドマイルズワークショップ2016
多摩産材 体験・取材ツアー


地域材の生い立ちや利活用を検討するウッドマイルズワークショップ2016の一環として、多摩地域の森林や原木市場、製材所などを実際に見て体験する多摩産材体験・取材ツアーを、2016年11月23日、24日にかけて行いました。
あまり知られていない大都市東京の森林木材資源「多摩産材」の実情や可能性について、16名の参加者と共に学びました。

1.多摩木材センター(原木市場)
 

<市場の概要>
・原木市場は都内に一箇所のみ。
・高級材は扱わず、並材を基本とした市場。
・多摩川流域と秋川流域に挟まれた地域の材料を扱う。
・平場が少ない地域のため、造成して平場を造り市場とした。
・毎月2回10日と25日にせり市を行う。
・セリの参加者は都内が50%、埼玉県が50%合計30名程が参加。
・基本的には委託販売(生産者の代わりに販売を行う)を行い、手数料を収入としている。
・木材は材料によってばらつきがあるため販売者(山側)が値段をつける事が難しい。購入者(製材所等)が値段を付ける「セリ」によって木材の売買を行う事が一般的。

<取り扱う原木丸太>
・スギ、ヒノキ3m材・4m材がほとんどで一部ケヤキを取り扱う(市場に置いてあるケヤキは山梨県産材)。
・丸太は径と長さ毎に分類し、何本かまとめて山をつくり、山単位でセリを行う。例:105角用φ140×15本の山、φ160~φ180×10本の山、φ200~φ240×5本の山、φ240~φ300×3本、φ300以上は1本単位。
・6m材や特殊寸法の材料は需要が少ないため、必要な場合は山へ発注をかけて段取りする事が多い。発注から納品まで1か月程かかる。
・スギ原木の値段は1.5万円から2万円/㎥程
・植え付けから原木を出荷できるまで300万円/ha程の経費が掛かる。300㎥/ha程生産できるが、販売価格が安すぎるため、山に残るお金が少ない。補助金がないと林業を経営していくことが難しいのが現状。

<認証材>
・伐採時小口に印を付ける「多摩産材=多」「FSC=青色」「SGEC=赤色」
・出荷時は産地等を記した伝票と一緒に製材所へ納品。
・製材時には小口の印が消えるので、再度印字する。
・認証材が他の材料と混ざらないように、各セクションが責任を持って管理する。
・山側・市場・製材所・工務店等各セクション毎に認証を得る必要がある。
・本来はユーザーまで認証の印を届ける事が理想的であるが、ユーザーが認証材であるかどうかを求める事が少ない。
・この市場ではSGEC認証材が80%、多摩産材認証材が70%を占めている。
・運搬は市場では対応していない。販売者が自社トラックで市場まで運搬。購入者がトラックで市場へ引き取りにくる(セリ後5日以内が基本)。

2.森林見学(御嶽駅付近、皆伐跡、造成地)
 

<概要・特徴>
・H22年~H26年、東京都花粉対策として皆伐された山に、品種改良により花粉の飛散が少ない樹種を植林した山。
・100万円/haで森林所有者から購入し、公費で花粉対策事業を行った。
・オリンピックや公共建築への利用等を考慮し、SGECの認証を得ている森林が多い。
・傾斜が急な山が多く(40度を超える斜面もある)、林道が整備されていないため、搬出コストが多くかかるのが問題点。
・伐採時の枝葉は産廃として取り扱いできないため、山に残したまま枯らしている。枝葉が斜面を流れていくのを防ぐため、各所に杭を打っている。
・企業のCSR活動として、山の管理費用(主に下草狩り)を支援してもらう。社内研修で下草狩り等を行う事もある。エリアごとに「(企業名)の森」と名付けている。
・多摩の林業は大規模な企業は少なく、家族経営くらいの小さな企業が多い。

<皆伐>
・皆伐の際は、各所に平らな場所をつくり、ワイヤーで吊って集材、その後はトラックで搬出。

<認証>
・SGECの基準に「生物多様性の保全」という項目があり、希少植物が確認された場合は移植・保護を行っている。
・多摩でFSC認証を受けている企業は1社のみ。FSCの認証を得るためには林産地でFM認証を取得、加工流通でCOCの認証を得る必要がある。認証に資金等も必要なため、小さな企業では難しい。
・多摩でSGECの認証を取得している製材所は3~4社。
・多摩産の認証材は「東京の木多摩産材認証制度協議会」が行う認証制度で2006年4月からスタート。

3.(有)浜中材木店
 

<概要>
・昔ながらの伝統工法を生かした家づくりを行い、それにあう材料を中心に生産加工している。
・原木は「多摩木材センター」にて購入。
・まずは購入した丸太を柱、梁、下地、土台等どの用途で使用するか仕分けする。
・丸太は皮むき(実演見学)→製材→乾燥→寸法調整の上販売する。

<木材乾燥>
・乾燥は蒸気式中温乾燥。
・構造材であれば75℃程で8~10日間乾燥機に入れる。
・その後モデルハウス「環の家」敷地内にて半年程天然乾燥。
・伐採時期が秋以降の材は水分が抜けにくいため、夏季に伐採した材よりも長期間天然乾燥を行う。
・高温乾燥を行うと、木特有の色艶がなくなってしまうため、中温乾燥+天然乾燥を採用している。
・含水率はハンディタイプの含水率計にて計測し、20%以下を目安としている。
・乾燥機の燃料は灯油を使用。

<造作材>
・造作材の加工も可能(図面を見て木拾いから行う事もある)。
・本実板等の仕上材の製造、販売も行う。

<ペレット>
・国産材のスギ・ヒノキを利用したペレットの製造を行う。
・購入者は都内がほとんど。
・業者だけではなく一般の方が直接購入可能。直接工場へ購入に来る人もいる。
・現状では値段が高価な事、入手方法が限られている等の問題があり、運賃や販売ルート等を見直す必要がある。
・ペレットストーブは薪ストーブと比較し、灰が少ない事がメリット

4.協同組合東京の木で家を造る会モデルハウス(環の家)
 

<概要>
・「東京の木で家を造る会」のモデルハウス。2階は事務局として利用。
・2010年3月に竣工。
・多摩産材の良さ、職人の技術の良さを知ってもらうためのモデルハウス。
・100%多摩産材無垢の木を使用。合板は使用していない。
・材料は浜中材木店さんから仕入れている。
・職人(大工・建具・左官等)の技を生かした構法を採用。
・敷地内には浜中材木店の材料を天然乾燥するストックヤードがある。
・構造材の加工は手刻み

<使用樹種・仕様>
・構造材=スギ
・壁=珪藻土塗り
・基礎=ベタ基礎
・野地板=スギ(ア)30
・2階床=荒板の上、杉フローリング
・玄関ポーチ=洗い出し仕上げ

<木製建具>
・襖の構造を知ってもらうために、一部襖紙を貼らず、下地を見せるように工夫している。

<その他製品>
・幅剥ぎパネル「木パネル」
・無垢の木を使った障子や木塀、衝立の販売も行う。

<ペレットストーブ>
・浜中材木店で販売しているペレットを使用。

5.(有)中嶋材木店
 

<概要>
・創業昭和30年
・販売している材料の7割が公共建築物用の内装、外装、下地、造作材。
・都内で唯一の製材JAS認定工場(造作製材、下地製材)
・構造材はグレーディングマシーンで性能表示(含水率・ヤング係数)が可能。
・既製品は大きな製材所に任せ、中嶋材木店では受注生産品に対応できる体制を整えている。(公共建築は受注生産品が多い)
・他メーカーと共同で無垢フローロング+合板の商品開発を行う事もある。
・販売先は材木店が多い。
・高温熱処理外装材も取り扱う。
・製材した材を近場でプレカットし現場へ直送するシステムもある。
・多摩産材を使った子供向け家具の受注生産も行う。

<木材乾燥>
・30㎥×1台、10㎥×2台の計3台を所有。他の製材所等と共有で8㎥×2台を利用。自社の3台はフル稼働で、乾燥が追い付かない事もある。
・乾燥は低温~中温(60℃程)。その後天然乾燥2~3か月。
・乾燥機の燃料は木くずボイラーと灯油を併用。
・昼間は木くずボイラーを使用、夜間は灯油に切り替える。(ボイラーマンを常時勤務させるのが大変なため)
・利用している木くずは丸太製材時に出る木の皮がほとんど
・柱材は4面背割り(細いスリット)加工をしてから低温乾燥+天然乾燥している。
・高温のドライングセットはヒノキの香りがなくなってしまうため、採用していない。

<御影橋保育園について>
・木造の公共建築物でLVLを利用した建物の場合、地域の製材所からはラミナー材を出すだけになってしまい、山にお金が落ちない。
→御影橋保育園の計画では原木市場で一般住宅市場で取り扱っている材料を利用してほしいと要望を出した。

6.御影橋保育園(多摩産材利用)
 

<概要>
・木造2階建て、約1000㎡
・0歳から6歳までの150名の園児が利用
・準耐火建築物
・化粧構造材は燃え代設計。

<構造計画>
・壁量計算+許容応力度計算によって確認申請を通している
 →構造材はJASの制限は受けず、無等級で対応可能。
 (基準法施行令第46条1号)
・耐力壁は「構造用合板+筋交い」を採用
・耐力壁の接合部はホールダウン金物を使用
・1階は最大7Mスパン、2階は10Mスパン
・構造材はなるべく一般流通材を利用できるよう計画。
スパンが大きいところは集成材を使用している(接合部はSE工法)。
・2階:8Mスパンの中心に垂れ壁を設ける事で、母屋の長さは4M材としている。(母屋は現し)
・垂れ壁は合板で剛性を高め、母屋材を受ける大きな梁という考え方で設計している。

<使用樹種>
・土台、大引=ヒノキ
・柱、羽柄材=スギ
・集成材=スギ
・その他レッドウッド、米スギを一部使用。

<木造公共建築物について>
・地域材を使った木造は高価と思われがちであるが、実際はRC等他の工法と比較して大きくは変わらない。
・同じ木造建築でも広島で構造に携わったプロジェクトでは、LVL等がほとんどで地域材を利用する事ができなかった。
・金物工法を利用した木造建築の構造計画を行う事が多い。

<その他仕様>
・2階バルコニーは避難経路を兼ねている。床は防水シートを2重貼りとしている。
・断熱材=グラスウール
・屋根=ガルバリウム鋼板葺き
・外壁=サイディング


過去の視察レポート一覧
2016.11.22-23 多摩産材 体験・取材ツアー
「ウッドマイルズワークショップ(多摩産材体験・取材ツアー)報告」
→体験・取材ツアー報告(PDF)

2009.9.19-9.23 ドイツ林業視察会
「ドイツ黒い森(シュヴァルツヴァルド)林業視察報告」
→視察報告(PDF)

2009年度 取組事例レポート
「森林~木材~家づくりの連携 異なるアプローチによる取組事例レポート(5事例)」
-木材に関する環境指標を中心に-
→取組事例レポート(PDF)
 

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